ニュースが分かる、新聞が読める

 ▼…「現代の社会的事象に関する様々な資料を適切に収集・選択して多面的・多角的に考察し、事実を正確にとらえ、公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる」。中学生社会科の学習指導要領の一節だが、ある私立校は「ニュースが分かる、新聞が読める」と学習目標を明快に表現している。

 ▼…新聞記者時代に、「記事は中学2年生が理解できるように書け」と仕込まれたのを思い出した。過日、その2年生を相手に市町村合併について「特別授業」をする機会があり、彼らの理解は大人の平均値に並ぶのでは、と感じる面もあった。質問は、合併メリットの財源にまで踏み込んだ。

 ▼…合併の流れの背景には、車社会の発展に伴う生活圏の広域化があるが、そのデメリットの直撃を受けるのが、移動手段を制約される高齢者であり、子供たちである。「合併したら高校はどうなるの?通学は?」。合併問題は、遠い先ではなく、目の前の切実な問題として映っている。

 ▼…北海道奈井江町が合併住民投票を小学5年生まで広げたことは、行政の姿勢として評価できる。しかし、○か×かの二者択一を求めるまではどうか。子どもたちの判断よりも、生の声を聴くことに工夫を凝らすべきだと思う。「多角的・多面的に考察し、公正に判断する」ことは、首長と議会にこそ求められている。

(27.Oct,2003 梶田博昭)