「軽い1票・重い1票」

 ▼…合併の是非を問う住民投票が、この1年間で100件(昨年は7件)を超えそうだ。先鞭を付けたのが、2001年7月の埼玉県上尾市。さいたま市との合併に、反対票が約6割を占めた。この投票で市が全戸配布したパンフの内容が問題となった。情報提供が不公正だ、として製作費の返還を求める住民訴訟にまで発展した。

 ▼…焦点となったのは二つの見出し。「吸収合併の場合、上尾市は消滅します」「今、吸収合併される理由は何もありません」。当時、人口104万のさいたま市は、政令指定都市に向け、22万の上尾市と3万の伊奈町に参加の意向を求めていた。さて、貴方が判事なら、どう裁く?

 ▼…先日の判決で裁判所は、「全体として違法とは言えない」と原告住民の請求を退けた。しかし、「消滅するのは事実」とする一方で、後者については「見出しの一部は不適切」とも指摘した。マイナス面が強調され過ぎており、「市民の選択にもう少し配慮すべきだった」という理由で。

 ▼…確かに「吸収されれば、営々と築いた歴史や文化・伝統も失われかねない」などの表現も引っかかる。ただ、具体的な合併協議を欠いて二者択一を住民投票に求めることに反対した市長の姿勢にも肯ける。その辺りを看破してか、裁判所は「今回の投票は市民アンケート」ほどと認定した。「1票の重さ」を再考したい。

(10.Nov,2003 梶田博昭)