起き上がり小法師のヒミツ

 ▼…「歴史読本」の編集長だった中島繁雄さんの「大名の日本地図」(文春新書)を読むと、江戸三百諸侯と呼ばれた各藩がいかに大きな自治権を持っていたかが分かる。それだけに藩主の器量と「小さな政府」の知恵次第で、勝ち組・負け組が鮮明になっていく。見方を変えれば、明治維新はその総決算ともいえる。

 ▼…小藩でもこんなこともできたという例が、1万5千石の小諸藩(長野県)。篤農家の年貢の加納分などを積み立てた「子育て米」や、公費の節約で80歳以上に「終身口分米」を給付した。西洋砲術の導入など軍事にも力を入れ、維新では新政府軍に加わって勲功を上げた。

 ▼…藩財政の窮乏が深刻化した元禄期以降は、藩政改革の取り組みが明暗を分ける。特に大きな要因となったのが、殖産興業と教育に関わる政策。要は「人づくり・ものづくり」にあった。会津藩(福島県)は、新技術の導入・養成を背景にした漆器や絹織物の増産・輸出により、借金財政の返上に成功している。

 ▼…会津の観光土産「起き上がり小法師」は、工芸品の生産奨励策の名残で、下級藩士の内職収入につなげながら不屈の武士魂を忘れさせない 狙いもあったとか。一方で、江戸にアンテナショップを開き特産品PRにも力を注いだ。「殖産興業」は現代においても重要なキーワードだ。

(13.Jan,2004 梶田博昭