消え行く「美し村」 ▼…「美」を頭文字に頂く全国10村が、岐阜県美並村に集まり「美しい村サミット」を開いたのは89年のことだった。この前年、自治省が初めて小規模町村の実態調査を行い、地方制度調査会は一極集中から多極分散に向けた分権推進を答申。「ふるさと創生」の流れが加速していった。 ▼…小さな村が一瞬輝きを増すかに見えた時期だが、過疎に歯止めはかからず、逆に財政は逼迫するばかり。美並村がこの3月、近隣6町村と合併し郡上市に、徳島県の美郷村は10月に吉野川市に。「美し村連邦」の多くが、その名を大合併の流れにかき消されようとしている。連邦解散は、時代の象徴なのかも知れない。 ▼…ただ一村事情が異なるのが、茨城県美浦村。JRAのトレーニングセンター立地の恩恵を受け、地方交付税に頼らずにすむ財政力を持つ。村長も単独自立を目指したが、全村民アンケートの結果は意外にも合併の賛否が45%対42%と拮抗。「美浦の名を残したい」という声の一方で、JRA依存の将来への不安も噴出した。 ▼…注目したいのは、調査表に添えられた約1500件の自由意見だ。45対42という数字を超えて、そこには故郷に寄せる住民の思いがある。百年後を見据える視点もあれば、足元に目を向け、知恵を出すことも惜しまない。住民が持つ潜在的なパワーを感じるのは私だけだろうか。 (26.Jan,2003 梶田博昭) |
|
||