公務員マインドの変革

 ▼…アントレプレナー。一般には「起業家」と訳され、ベンチャービジネス隆盛の90年代に日本でももてはやされた。当時は「一発屋」的なニュアンスもあったが、近年は経済再生の「変革者」的な色合いが強い。社内起業家を制度化した松下電器は、今春の新卒者を対象に「アントレプレナー採用」にも乗り出している。

 ▼…企業家精神を行政の世界に導入したのが、横浜市の中田宏市長だ。 職員の自由な発想に基づいて、政策の企画・立案から実行までを託す。本格実施の2004年度は、市民参加による大型風力発電の事業化や広範な資産を活用しての広告料収入の拡大など3件が動き出すことになった。

 ▼…「アントレプレナーシップ制度」は、ほかの自治体にも広がる気配だが、その仕組みや事業の成果だけに目を向けると本質を見誤る。中田市長が「公務員マインドの変革」というように、第一に問われているのは、職員意識と組織の改革にあるからだ。むしろ、制度を必要とすること自体に「組織風土の劣化」を感じる。

 ▼…松下の試みに、就職難にあえぐ学生の関心が沸騰した。しかし、失敗しても松下社員の身分が保証されるわけでないと聞き腰が引けた学生も多かったそうだ。それに比べても、役所のアントレプレナーは、「挑戦者」のリスクレベルが低いと考えるのだが、貴方はどう思う?

(1.Mar,2004 梶田博昭)