宇宙飛行士の出会った生き物

 ▼…宇宙飛行士・毛利衛さん(現在は日本科学未来館の館長)のお話を聞く機会があった。水の存在の証拠を突き止めた双子のマーズ・ローバーの探査から「火星の生命体にめぐり会える日も遠くない」と瞳を輝かせる。かつて学校を休んで日食観測に出かけたという少年時代に戻ったかのように。

 ▼…火星人にとって、地球はどう映るのだろうか。宇宙船の窓から見えた唯一の動物は、珊瑚礁だった。地上最強の人間も、探査ロボット・オポチュニティの視界にさえ入らない火星の微生物とそう変わらない存在なのだ。人間がいようがいまいが、地球が厳然とあることに圧倒されたという。

 ▼…しかし、ちっぽけなだけに何十億年にわたって繰り広げられてきた生命の連鎖の重みを実感するのだという。進化は、適応できなかった生物の絶滅の歴史でもあるが、毛利さんは「少数の挑戦者の勇気ある行動が、その成功によって集団を引き連れていく」発展の歴史と見る。

 ▼…勇気はときに「好奇心」であったりもするが、挑戦の繰り返しが、空を飛ぶ鳥を生み、月に降り立つ生き物さえ登場させた。宇宙から見えない人間も、夜の闇に浮かび上がる都市の光が生命の存在を教えてくれるという。その光が互いにつながり合っている様に、宇宙飛行士は地球の温もりを感じるのだという。

(12.Apr,2004 梶田博昭)