ダイバーの出会った生き物

 ▼…雑誌の対談で水中写真家・澤谷信康さんから海底の生き物の話を聞いた。カナヅチの上に閉所恐怖症の私にも、異次元の世界がいかに魅力的かを感じ取ることができた。同時に、豪州などで見かける珊瑚(サンゴ)の白化現象のリポートが、気になった。日本の海の宝・沖縄の珊瑚礁も無縁でないと聞くからなおさらだ。

 ▼…白化は、珊瑚と共生する褐虫藻(かっちゅうそう)が水温の上昇などで分離することから起きる。何千何万もの微生物の集合体である珊瑚は、栄養失調に陥り、最後は白骨のようになって死滅する。白化現象の世界的な広がりは、地球の温暖化が原因と考えられ、「異次元の話」と済ませてはいられない。

 ▼…珊瑚が発する警鐘は、生物学者リチャード・スミスの記録映画「無言の番人」(98年)によって、注目を集めるようになった。しかし、海底の異変に最初に気付いたのは、澤谷さんのような海を愛するダイバーたちだった。そこが余りにも美しい世界だったからこそ、珊瑚の悲鳴は切なく聞こえてきたのだろう。

 ▼…フリーダイビングを描いた映画「グラン・ブルー」で、主人公は「地上に戻る理由が見つけられなくなるのが海中の恐怖だ」という。そんな最後の楽園を守る上で、地球を一つの生命体と見る宇宙飛行士の目や、プランクトンの変化にも敏感なダイバーの目が、必要とされている。

(26.Apr,2004 梶田博昭)