コミュニティ・コミュニケーション

 ▼…世界で最も貧富の差が大きいとされるブラジル。都市の片隅には、不法占拠のバラックが並ぶ。そんなファベーラの一つに、小さなFMラジオが開局した。マイク片手の子どもたちがリポーターを務める。市場のおばさんがまくしたて、初老の紳士が語りかける。ときには住民同士の激しい対立も見せる。

 ▼…そんな様を描いた市民ビデオ作品が、東京ビデオフェスタの大賞に輝いた。注目したいのは、FM放送が、コミュニティの住民が互いに情報を発信し合い、意見を交わし合う場となっている点だ。この媒体がなければ、対立がいつまでも不毛ないがみ合いに終始するに違いない。

 ▼…社会学者、F.J.ベリガンは、「コミュニティが決めた目的のためにコミュニティ自身が使うメディア」を地方自治の重要な要素と見る。この考えに立って、米国では、ケーブルテレビ(CATV)局に対し、住民の自由な意見発表のためのチャンネル(Public Access Channel)確保を課し、住民手作りのコミュニティ放送が盛んに制作されている。

 ▼…CATV普及率が全世帯の3分の1に達した日本でも、同様の試みが散見されるようになってきた。通信回線の高速化も後押しすると見られるが、一方で住民には情報を読み解く能力を磨くことも求められている。自前のメディアを持ち、使いこなすコミュニティは結束が固い。 (梶)

(21.Jun,2004 梶田博昭)