トンネルを抜けると、そこは…

 ▼…コシヒカリの産地・新潟県南魚沼郡。関越道を車で走ると、田園風景とは不釣り合いな、巨大な工場が突如として現れる。これまた大きな文字で「雪国まいたけ」。実際、そこは「工場」と呼ばれ、かつては「幻のキノコ」と珍重されたマイタケがコンピュータ管理によって大量生産されている。

 ▼…20数年前、北海道の日高で初めて口にした。山で見つけて喜ぶ姿から「舞い筍」と聞き、神妙に。しかし、今では年中、スーパーの店頭に並ぶ。健康食品ブームも手伝って、エリンギなどとともに、家庭でも定番の食材となっている。そして「雪国まいたけ」の市場シェアは70%を占める。

 ▼…量産技術は、六日町生まれの大平喜信社長が開発した。最先端のバイオ技術の成果と思いきや、自生のマイタケを丹念に観察し、自然環境を工場に再現できたのが決定打になったという。東証2部上場に続き、ニューヨーク郊外に生産拠点を設けて、米国市場の席巻も狙っている。

 ▼…市場のパイとシェアのダブル拡大は、大平流の低価格戦略にありそうだ。高級食材として高値を追求すれば、大手資本の参入を許す。逆にコストダウンに徹し値を下げていけば、参入に二の足を踏ませる一方で、消費者には喜ばれる。地方企業や農業を元気にし、日本産の国際競争力を高めるヒントがそこにある。(梶)

(5.Jul,2004 梶田博昭)