炊き出しは花嫁の味

 ▼…もう20年以上も前だが、震度6の恐怖は今でも体が覚えている。北海道・浦河沖地震(1982年、M7.1)では、多発地帯ということもあって住民の備えが被害を最小限に食い止めた。神社の境内で記念撮影中に激震に見舞われた花嫁が翌日、真っ白な割烹着で炊き出しのおにぎりを握っていた姿を思い起こす。

 ▼…新潟中越地震でも、住民同志の絆が互いを支え合い、復興への足掛かりともなっているようだ。最初は同じ空間にいながらバラバラに見えた避難生活は、集落単位に寄り集まることで被災者の意思決定や行動にまとまりができ、救援活動もスムーズになってきたという。

 ▼…災害時に近隣関係が生命線を握ることは、阪神淡路大震災で実証されている。瓦礫の下の被災者の多くを救出したのは、消防士でも自衛隊でもなく家族や近所の人々だった(防災白書によると要救助者の77%を救った)。この経験から、神戸市では、小学校の校区を「近隣生活圏」として防災対策を組み立てている。

 ▼…自助(個々の市民や家族の力)互助(地域力)共助 (NPOやボランティアの力)公助(行政の力)。4つの力の協働と連携は、災害時に不可欠だが、平時に培われてこそいざというときに威力を発揮する。震災は、人や地域の絆の大切さを忘れさせないためにやって来るのか。 

(2.Nov,2004 梶田博昭)