倫理基準を明確化、チェック機能保障
政治倫理条例は、市会議員の汚職をきっかけとして83年に大阪府堺市が制定したのが始まり。市民に調査請求権を保障するなど市民監視を制度化するなど、画期的な内容でした。リクルート事件など一連の国会議員による汚職事件を機に、92年には国会議員の資産公開法が制定されました。
■市長選で条例化を公約
資産公開法では、都道府県と政令指定都市の首長と議員、市町村長に対しても、国会議員に準じた資産公開条例の制定を義務付けました。しかし自治省が示したモデル条例は、対象を市町村長に限定し、本人名義の資産報告に限るなど、必ずしも十分な内容ではありませんでした。
90年代後半に入ると、地方自治体の中には、資産公開にとどまらず、首長、議員らの政治倫理を真正面から取り上げる条例が少しづつ増えてきました。地方政治の舞台における汚職事件の多発が、政治倫理条例のきっかけとなったケースも多く見られましたが、首長や議会が積極的に条例化に動いたケースもあります。
全国的には九州の自治体が積極的な動きを見せ、中でも福岡県は97市町村の約3分の2が条例制定に踏み切っています。内容的にも、企業献金の全面禁止や特定事業者の推薦、紹介の禁止など、かなり厳格な条例も少なくありません。
■市三役も対象、審査会は公開
福岡県大野城市の場合は、89年の市長選挙で政治倫理の確立を公約に掲げた前市長が当選したのをきっかけに、直ちに政治倫理条例が制定され、96年には全面改正で内容が強化されました。倫理基準では、市長、議員のほか市の三役も対象とし、地位を利用した金品授受はもちろん、請負契約などに関する特定業者に対する便宜や、職員採用に関する推薦、紹介も禁じています。資産報告については配偶者、同居親族らにも提出を求める内容となっています。
さらに審査会は常設、公開。審査会の委員6人は任期2年で、弁護士、税理士、市民各2人で構成されています。情報公開が徹底されているのも特徴で、資産等報告書は、市民がいつでも閲覧できるようになっています。
政治倫理条例は情報公開条例とともに、行政の透明性と、住民によるチェック機能を保障するもので、地方自治体における行財政改革の基盤づくりのひとつと考えることができます。
〔政治倫理基準=政治倫理・九州ネットワーク市民モデル政治倫理条例案から抜粋〕
1. 市民全体の代表者として品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その職務に関して不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。
2. 市民全体の奉仕者として常に人格と倫理の向上に努め、その地位を利用していかなる金品も授受しないこと。
3. 市が行う工事等の請負契約、下請工事、業務委託契約及び一般物品納入契約に関して特定業者を推薦、紹介するなど有利な取計いをしないこと。
4. 市職員の公正な職務執行を妨げ、その権限若しくはその地位による影響力を不正に行使するよう働きかけないこと。
5. 市職員の採用に関して推薦若しくは紹介をしないこと。
6. 議員は、職員の昇格、異動に関して推薦若しくは紹介をしないこと。
7. 政治活動に関して企業、団体等から寄付等を受けないものとし、その後援団体についても政治的又は道義的批判を受けるおそれのある寄付等を受けないこと。