▼…社会理論を研究している和光大の浅見克彦教授が『時間SFの文法』(青弓社)と題した本を書いた。タイムトラベルなどを扱う小説のガイドブックと自称しているが、変幻自在に操られる時間軸の構造分析とも言うべき内容で、普段なじみの薄いSF小説を読んでみたくなった
▼… タイムマシンを使って過去を改変する物語は、自然法則への反逆があるからこそ、スリリングなストーリーに仕立て上げられると言う。反逆を拒むのは時の神であり、例えば、ある小説では愛が強行突破の切り札になるのだそうだ。確かにそれなら許せるかも知れない
▼… 歴史研究も、タイムトラベルの一種と言える。できればタイムマシンで屯田兵だったご先祖に一目会って、あれこれ話を聞いてみたい。それは無理でも、色あせた古文書の中に名前を見つけた時には、一瞬彼が語りかける声を聞いたかのような錯覚をおぼえる
▼… 先祖に限らず、歴史上の人物や出来事に肉薄した時、誰もがタイムスリップを体感し、クロノスの抵抗に会うほどにさらに異界に踏み込みたいという衝動に駆られるのではないだろうか。屯田兵のルーツを探るうちに「意外な真実」を踏み抜き、歴史探検の深みにはまっていった人を何人か知っているが、実は私もタイムトラベラーの一人である。