▼…「まじっすか」「やばいっすよ」「わろた」インターネット上の交流サイト(SNS)では、こんな言葉に加えて絵文字・顔文字までもが、コミュニティの共通語となっている。しかもSNSの中だけでなく、世間一般の日常生活にまで溢れつつあるというから、ホントにまじっすか ?
▼…雑多な人間が集合するという点では、北海道内37ヵ所に開かれた屯田兵村はSNSとちょっと似ている。しかし、このコミュニティに初めに行き交ったのは、それぞれの出身地のお国なまり。「屯田兵証言録」には、言葉(意思)が通じないことから起こった悲喜劇が、数多く伝えられている。
▼…出身地が30県を超える、極めて異色の入植地で、言語がどのように変容していったか。そこに目を付けて昭和40年代に上川・空知で聞き取り調査をした言語学の小野米一先生は、「兵村では〈方言→地域共通語→全国共通語〉という共通語化が進んだ」という。例えば、ミナンダ→ミンカッタ→ミナカッタ(見なかった)、バクル→ドンスル→コウカンスル(交換する)といった具合に。
▼…共通語化の背景には、運命共同体的な兵村の特性があったのではないか。ある当麻屯田兵は、こんな思い出を語っている。「風呂、井戸、の共同利用の上で不便や不快を感ずることがあったが、これが家族間の交際を急速に近づけ、話題もふえ明るい雰囲気を作るに大いに役立った」。今や、遠い明治のSNSの話だが ...
(絵図は広沢徳治郎作「屯田絵巻」より抜粋)