「資本の論理 メディアの倫理」〜書評・新刊書紹介記事(抜粋) |
■総合ジャーナリズム研究
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日刊紙『北海タイムス』の崩壊に至るまで、内部にいた者しか知り得ない事実を赤裸々に綴った、興味深いドキュメントである。とはいえ、その内容は決して暴露的なものではなく、「資本と経営の対立」、すなわち会社の実力とはかけ離れたフリーペーパー創刊で経営再建を目論みながら、その言動を二転三転させて社業を混乱に陥れていく社主と、莫大な赤字を垂れ流し、社主の資金援助がなければ社会保険料の納付さえも滞るような状況にありながら、最後まで真の危機感を持ち得ず、再建への処方箋が打ち出せなかった経営幹部の動きを、経営資料や裁判記録を忠実に収録しながら、つとめて客観的に描いている。 |
■「新聞研究」ブック・レビュー
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本書は、「資本と経営の対立」を基本的な構図とし、そこに「破綻の実像」があるとの視点から、その様を克明に再現、資本とジャーナリズムがぎりぎりのところで対立した場面、北海タイムス社最後の1年間の動きを整理したもの。当事者という立場から離れた視点で見つめ直すため、52点の経営資料や裁判記録はできるだけ原本に忠実に収録している。 |
■紹介〜ほっかいどうの本
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1998年9月に廃刊になり、52年の歴史を閉じた「北海タイムス社」崩壊の軌跡を、経営資料と裁判記録を基に再現した「クライシス・ドキュメント」です。マスコミで報じられることのなかった資本と経営の暗闘の時代をリアルに描きながら、「北海タイムス社」破綻の実像に迫ります。曲がり角にあるメディアの役割や、企業の危機管理の在り方を改めて問いかける内容です。また、収録された52点の経営資料と裁判記録は、資本とジャーナリズムのせめぎ合う地方新聞の存在を総括するものです。 |
■ほっかいどうの本 |
北海タイムス紙が破たんに追い込まれていく最後の1年間を、内幕を含めリアルに描き出したドキュメントである。迷走の様子が、経営資料や裁判記録なども交えながら、現場に立ち会っていた著者によって克明に再現される。新聞に限らず出版や放送など、資本(経営)と言論(表現)活動を行う現場との相克は、メディアにとって永遠の課題ともいえる。しかし「資本の倫理」の暴走は、どのような結果を生み出すのか。本書はそのひとつの典型の記録として興味深い一冊といえる。 |
■北海タイムス廃刊の内幕を
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崩壊の過程を内部の目で克明に迫った労作で、廃刊の知られざる内幕が、多くの経営資料、裁判記録を交えて明らかにされている。収録された52点の経営、裁判資料は、著者の手によって処分を免れたもので、戦後各地に誕生した地方紙の一つの生きざま、リストラ時代の企業危機の側面を物語る貴重な記録でもある。 |
■「北タイ」崩壊の軌跡 元社員が出版
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55年の歴史と、かつては20万部の発行部数を誇りながら、迷走の果てに経営破たんした「北海タイムス社」。不況風のなかで投げ出された240人の社員と500軒の販売店。ストーリーは異業種オーナーと記者たたき上げの社長の相克を軸に展開。労組、販売店を巻き込んで牽制、背反、暗闘が続く。「公器」を守ろうとした経営陣。もてあそんだオーナーとの悲劇が際立つ。 |
■倒産までの「抗争劇」〜臨場感あふれるやり取り
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北海タイムスは終戦翌年の昭和21年の創刊。一時は20万部の部数を持った。しかし相次ぐ全国紙の北海道進出で部数を減らしていく。本書は倒産までの「抗争」の中にいた著者による最後の1年間のドキュメンタリーである。1年間に及ぶ抗争劇を経営資料や役員会の議事録、裁判記録なども明らかにして伝える。 |
■地方紙の生き残りかけたクライシス・ドキュメント
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ストーリーは、異業種から参入し経営権を握った新オーナーと、記者叩き上げの社長との相剋を軸に展開される。筆者は、あとがきの中では「私自身が当事者でもあったわけですから、完全に第三者として事態を俯瞰することは不可能ですが、できるだけ当事者という状況から離れた視点から北海タイムスで起きたことを見つめ直した」と記している。 |
■「正義と悪」報道に違和感
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経営難に陥った北海タイムス社が、異業種からきたオーナーと生え抜きの経営陣、労組との対立などを経て、崩壊するまでの軌跡を克明に再現したドキュメントである。著者は、報じられることのなかった資本と経営の暗闘にこそ、破たんの実像があるとする。メディアの役割、企業の存続とは何かを、あらためて問い直す。 |
■崩壊の経営その内側に迫る
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著者は、北海タイムス社の報道部長、総務局長を経て、経営管理室長を最後に退社した。ドキュメントでは、計52点の部内経営資料や裁判記録などを基に、創刊から半世紀を経て「なぜ危機に陥ったか」や、その「終えん」を活写している。 |