市町村合併最前線

 8.中核市実現で産学が支援・提言

 岩手県では、盛岡市と隣接する矢巾町、滝沢村の3市町村の合併問題が焦点となっています。実現すると中核都市(人口35万人以上)指定の条件がそろい、北東北の拠点都市としての発展が期待できることから特に、盛岡市長は積極推進の姿勢です。しかし、全国一の人口を抱える滝沢村には単独市制移行論も根強く、住民、商工界、地域大学などを含めた合併論議が白熱化してきています。

 盛岡市は92年に都南村を吸収合併した当時から、生活経済圏が重なる両町村との合併による中核都市形成を想定していました。その後の経済情勢の変化はありましたが、国の合併促進の動きを受けて盛岡商工会議所などは、景気回復の期待も込めながら経済界全体で合併推進を支援する姿勢を打ち出しました。

 一方、県立岩手大学総合政策学部の広域行政研究会はことし3月、県の合併指針に先駆けて、広域生活圏ごとに17の組み合わせを盛り込んだ研究報告書をまとめました。この中で盛岡など3市町村については「より質の高い住民サービスを提供するためには、中核市以上の権限と能力を持った自治体の誕生が期待される」として合併推進の必要を強調しました。

 昨年11月の最初の3首長会談では合併にやや慎重だった盛岡市長も、こうした動きを背景にして積極姿勢を強めていきました。その後の3者会談では、合併そのものの論議は県の指針後に具体的に行うこととしながらも、それぞれの自治体が考えているまちづくりの方向性や、道路整備、商業地再開発計画などに関しての意見交換を進めていきました。

 ■単独で市制移行か合併か

 6月にまとめられた県の合併指針では3市町村の合併が「最優先パターン」と位置付けられましたが、3首長の会談ではそれぞれの認識の違いも改めて浮き彫りにされました。

 盛岡市長が「生活、文化、経済圏として密接な関係にある矢巾町、滝沢村との合併を軸に中核市を実現し、順次拡大していきたい」と合併推進の考えを打ち出したのに対し、滝沢村長は合併の方向性を認めつつも「この3市町村の合併パターンにこだわりたくない」と難色を示しました。また、矢巾町長は「住民の意向把握をした上で判断したい」と慎重な姿勢を見せました。

 ■住民に対し判断材料提供へ

 県の指針に対しては三者三様に分かれはしましたが、各自治体にとって合併が避けて通れない課題であるとの認識は共通し、3者会談は7月中だけでも3回開かれるなど、合併論議は継続されています。盛岡市長は、3自治体の担当者による広域連携の検討会を設置し、問題や課題を明らかにするための調査と資料づくりを進めることを提案しました。

 3市町村合併による中核市構想の先行きはなお不透明です。しかし、合併によって何が変わるのか、どう変えていくのか、住民に対する判断材料を提供することで、はじめて地に足の着いた合併論議に入ることができると期待されます。

(市町村合併最前線 了=Oct,2000)