市町村合併最前線

 7.住民参加でようやく本格論議へ

 国の方針に基づき三重県はことし6月に県内69市町村の合併パターン案をまとめ、これに基づいて合併案について関係市町村の検討作業が進められることになりました。地理的な条件や藩制時代の歴史的な結び付きなどから、三重県では隣接する自治体間が連携し合う素地が比較的強くあるようです。介護保険制度の導入に合わせた広域連合は、伊賀地区も含めて8地区で組織されています。

 ■国、県の「上意下達」に批判も

 しかし、市町村合併となるとそうスムーズに事が運ばないことは、県内でも合併の有力候補と見られた伊賀市構想の混迷ぶりが象徴しています。その背景には、国から県、県から市町村へと降りてくる「上意下達型」の合併の流れもあるようです。市町村長の中からは「合併すれば、という前提の良いことづくめの話は流れてくるが、地域をどうするかという視点が薄い」という批判も聞かれました。

 肝心の住民は合併問題をどう考えているのでしょうか。住民アンケートなどを通じて関心は少しづつ広がっていますが、必ずしも合併に関する情報が県なり市町村なりから十分に提供されてはいないようです。
 そんな中、7月から県民局単位の「地域懇話会」がスタートし、一般住民も直接合併論議に加わることができるようになりました。

 ■デメリット情報の検証を

 懇話会では、「行政の都合を優先せず、産業や経済を十分考慮してもっと柔軟に結び付いてもいいのではないか」「デメリット情報をもっと公開して、問題を克服する手だてを具体的に考えるべきだ」といった前向きの意見も多く聞かれました。

 2005年3月までに限定された特例措置という「あめ玉」を求めての合併熱は、ここにきてようやくさめ、住民を交えた合併論議の緒に着くかのようにも見えます。府県の指導や市町村長のリーダーシップは欠かせないものですが、住民が議論の輪に加わってこそ、地に足の着いた対応策が生み出されるのだと思います。

 伊賀地区で行った住民アンケートでは、広域で対応するのが望ましい事業として挙げられたのは、「廃棄物の一元処理」「保健福祉サービスの提供」「公共施設の共同利用」「消防組合の一元化」「観光行政の一元化」の順でした。まちづくりの方向は「健康福祉都市」「と「環境保全都市」に期待が集中しました。
 「何を求めて合併するのか」。住民の視点に立った議論を欠かすことはできません。