市町村合併最前線

 6.揺れる「忍者の里」、各論で足並みに乱れ

 三重県中西部の上野盆地周辺は、古くから「忍者の里」として知られています。上野、名張両市に伊賀、阿山、青山町、島ヶ原、大山田村を加えた7市町村の首長が合併による「伊賀市」実現に向けて足並みをそろえることで合意したのは、99年6月のことでした。財政支援の特例措置が受けられる2005年には、四日市市に次ぐ県下第二の都市が誕生するかに見えましたが、1年経た今、構想は大きく揺らいでいます。

 ことし7月に開かれた伊賀地区広域市町村圏事務組合(管理者・富永英輔名張市長)の管理者会議で、急速な合併には慎重な富永名張市長と、早期合併を求める他の6首長との「路線対立」が表面化したのです。翌8月の事務組合の臨時議会では、名張市議を除く議員10人が「合併推進の方向にそぐわない」として富永名張市長の管理者辞任勧告決議案を提出し、溝は一気に深まっていきました。

 ■研究先行案に6首長猛反発

 富永名張市長の考えは、「広域連携や合併についてしっかり調査研究をすべきだ」というもの。財政状況や職員の給与体系など市町村の事情の違いを考慮しない、早急な合併は混乱の元になるという懸念が背景にあったからのようです。

 しかし、伊賀町長らは「合併の方針を定めて進める段階にある。方向があいまいな研究は無意味だ」と譲りません。法的な根拠のない辞任要求は、「タイムリミット」がそう先のことではないのに消極的な名張市長に対する苛立ちの表れともいえます。

 10月に入ると、合併協議会の設置を目指す「伊賀市を考える議員の会」から名張市議が脱会しました。とはいっても、合併を完全否定しているわけではなく、逆に、首長が積極論の6市町村の議員の間にも慎重派が少なくありません。果たして、雨降って地固まるのか?。

 グラフは、事務組合が99年6月に7市町村で行った「合併に対する期待度」に関する住民アンケートの結果です。伊賀町の40%が期待を抱いているのに対して名張市民は15%どまり。全体では、「圏域での広域事業の推進」(48%)、「7市町村合併」(22%)、「現状のまま」(11%)、「圏域を越えた周辺自治体との連携」(10%)といったように、住民の声にも大きなばらつきが見られました。