行政評価・入門編 2.客観評価が政策論議を活性化 成果主義に基づいた行政評価は、八〇年代後半から米国の自治体で次々と導入されていきました。オレゴン州の評価システムはそのモデル的なケースで、林業や農業など地域産業の低迷などによる財政危機が、導入の大きなきっかけとなりました。導入のリーダーシップを取ったのは知事で、単にトップダウンで押し進めるだけではなく、行政を透明なものとして公開することで、職員や議員、さらには住民の知恵や力を最大限に取り入れていったのです。 住民満足度を指標としたベンチマーク方式を採り、当初二百五十九あった指標は徐々に整理され、九九年版のリポートでは九十二項目にまで集約されています。 「オレゴンシャイン計画(現在はパート2)」と呼ばれる総合計画は、目標や尺度が明確になったことにより、まず行政の組織内部では職員の目的意識と戦略思考が高まりました。他の州、地域や民間サービスとの競争原理がはっきりと表れ、改革、改善の取り組みを加速させたのです。 九九年版リポートの「地域経済活性化」の項では「全米における新企業の設立ランキング」が「重要ベンチマーク」の一つに挙げられています。ビジネス創出・新企業育成は「住民の雇用環境を高め、地域経済を強化する基盤となる」との判断から需要指標に選定されました。 しかし、リポートではこの結果だけで満足せず、ほかの指標などから、「生活環境は他の地域に勝る面もあるが、大学、熟練労働者、空港、起業家の受け入れ態勢になお課題がある」と新たな政策、施策の必要性にも言及しています。さらに、「全国トップに立つためには」として、「コンピュータ技術、ビジネス専門教育の拡大による人材育成と、大学と産業の連携強化」を今後の課題に掲げ州政府、議会内での積極論議に水を向けています。 評価は議会の存在を空洞化させるのではないかと懸念する声もありましたが、まったく逆でした。客観的なデータと評価が基になるから、議会論議もより公正で発展的な展開を見せたのです。それまで主観的な論拠に基づく不毛の論議を繰り返していた、行政と議会、住民の間の政策論議の場で行政評価は「共通語」として機能しているのです。 |
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