行政評価・入門編 5. 総花行政から政策選択の時代へ 第一の理由に、財政編で取り上げた地方財政の悪化が大きく影響していることが挙げられます。特に、不況を背景に地方税収が大きく落ち込んだ都道府県は、財源が確保できない以上、歳出をできるだけ抑え込むことが必要となってきました。前に紹介した米国オレゴン州などと共通の時代背景があったわけです。 問題は「あれ」を選ぶか「これ」を選ぶかの選択基準です。時にはほかの事業を優先し、住民に我慢を強いる以上、十分な理解を売るための説明が必要で、その「ものさし」として行政評価がクローズアップされてきたといって良いでしょう。 いち早く導入に踏み切った三重県の議会では、評価に基づく政策、事業の選択をめぐる論議が活発になってきているそうです。選挙地盤の住民要求に片寄りがちだった議員は、県政全体に目を向けるようになり、各会派も一方的な要求をするのではなく、「どちらが今必要な施策か」「優先事業は何か」といった政策論議を重視する傾向を見せています。 第二の理由は、少子高齢化・情報化・価値観の多様化を背景にして、行政に対する住民ニーズも多様化・複雑化してきたことです。自治体は改めて地域の状況を見つめ直し、住民が求めているものを細かく分析し、より大きな満足を、効率的・効果的に進める必要が高まってきたからです。ここでもやはり「政策の選択」が重要で、住民を納得させる説明が必要になってきたのです。 きっかけは好ましいものではありませんが、一連の不祥事は「いったい自分たちが納めた税金はどう使われているのだろうか」という税と行政サービスの質に対する関心を高める結果をもたらしたともいえます。 この一方で、自治体側は行政のアカウンタビリティ(説明責任)、情報公開の重要性を再認識させられたことも、大きな要因となています。 第四の理由としては、国の政策による地方分権の流れが挙げられるでしょう。住民を主役として、行政への住民の参画に道を開く行政評価は、住民自治の理念に合致するものです。 |
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