電子自治体と住民参加(上) 

 「行政の効率化・利便性に重点」

2002/05/13
(オンラインプレス「NEXT212」79号掲載)

 

 「電子政府・電子自治体構想」が、総務省を中心に急ピッチで進められています。2000年1月の「e−JAPAN戦略」に基づき、「5年以内に世界最先端のIT大国」となることを目指す国の重点政策だからです。

 ■住民台帳から電子窓口サービスへ

  電子政府・自治体構想は、これまで書類や対面方式で行ってきた行政内部や行政と国民・事業者との間の業務や手続をオンライン化し、ネットワークを通じて国・地方が一体的に情報を共有・活用する新たな行政システムの構築を目指しています。これにより、行政を効率化し、国民の利便性を高めつつ、産業・経済のIT化も牽引しようというのが、大きな狙いです。

 2001年10月に総務省が公表した推進プログラムでは、地方公共団体の電子化は・国・地方を結ぶネットワークの基盤整備・インターネット上での本人確認のしくみづくり・電子窓口サービスの推進〜という3つのステップを設定しています。第1段階では住民基本台帳ネットワークの稼動(2002年8月)を目標としていますが、全国の自治体と中央省庁を専用回線で結ぶ「総合行政ネットワーク(LGWAN)」=図参照=に接続された自治体は26市町村(4月1日現在)で、かなり遅れ気味となっています。

 第3段階では、これまで窓口まで行かなければならなかった各種の申請手続きがパソコン上で居ながらにしてできる「電子申請システム」を整備し、地方税の電子申告、電子調達、さらには地方選挙における電子投票のモデル実験にまで踏み込む計画です。

 ■立ち遅れているIT専門職の人材育成

  電子自治体構想の推進は、市町村合併とも関連しています。特に、「合併すると、役所が遠くなり、行政サービスが低下する」といった合併消極論に対し、電子自治体による地理的な制約の解消が強調されています。  しかし、LGWANの整備の遅れや、3年間で1万人を目指している自治体の専門職員の配置、インターネット利用環境の地域間格差、高齢者や障害者らのデジタル・デバイド(情報格差)の問題など、課題は多く残されています。中でも、ネットワークの運営にとって重要なセキュリティや、個人情報保護などメディア・リテラシー(情報の適正処理)に対応した職員・人材養成の立ち遅れが、ハード面の整備以上に今後の大きな課題となりそうです。

イラストは総合行政ネットワークイメージ(総務省資料から)

 

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