来るか 地域主権時代〜藤沢町に見た住民自治の姿

【6.町の財政】

地域メディア研究所代表 梶田博昭

2002/09/24
(オンラインプレス「NEXT212」95号掲載)

 

磐井地方9市町村の財政概要  (2000年度決算から。人口は2001年3月末住民登録)

 ■増える借金、経常費抑えやり繰り

  2000年度決算を見ますと、標準財政規模が約41億円で、財政力指数0.19(県内町村平均0.22)と、ほぼ北海道の町村(財政力指数平均0.20)と同じような条件にあります。

 最も目に付くのが、総額で約77億円、住民1人当たりに換算すると約73万円に上る地方債残高と、債務負担行為の約71億円です。90年代に町民病院、シルバーセンターなどの医療福祉関連の施設整備や営農環境整備を集中的に進めたことが、「借金」の増大につながったと見られます。

 ■オンボロ役場に名町長あり

 特に、債務負担行為は、翌年度以降に返済が必要になってくる実質的な借金ですから、今後のやり繰りは厳しいものが予想されます。借金返済の負担の程度を一般財源のレベルで示す公債費負担比率も、危険ライン(20%)を超える22.9%と高くなっています。

 しかし、公債費のうち交付税で措置される経費などを除いて算出する起債制限比率は、一般に15%を超えると黄信号、20%で赤信号とされるのに対して、12.7%と低い水準にとどまっています。経常的な経費に充てた一般財源の割合を示す経常収支比率も80.1%とほぼ適正水準(70〜80%)にあり、経常的な支出をできるだけ抑えながら、借金の返済についても一定の計画性を持って台所を切り盛りしていることがうかがえます。

 経常的な経費の抑制という点では、職員の給与や議員報酬などの人件費は24.4%(県内町村平均28.2%)と、他の自治体に比べて低い水準にあることが目に付きます。また、近代的に整備された医療・福祉施設に対して、役場は1959年建築の木造で、「おんぼろ庁舎に名町長あり」の仮説がここでも実証されました。

 黄海地区の公民館では、1955年の合併で消えた「黄海村役場」の名前が付いたスチールロッカーが現役で使われており、「経費節減」と「物を大切にする心」が隅々にまで行き届いていることをうかがわせました。 

(Sep,2002 了)

 ******************

 本稿は、財団法人・北海道市町村振興協会「住民参画型まちづくり推進方策調査研究会」(座長・佐藤克廣北海学園大学教授)の道外調査(2002年9月実施)における報告書としてまとめたものです。  全国の自治体が注目する藤沢町に関しては多数の視察報告がありますが、出版物では「希望のケルン〜自治の中に自治を求めた藤沢町の軌跡」(大久保圭二著、ぎょうせい刊)、「地方自治土曜講座ブックレット47号〜自治の中に自治を求めて」(佐藤守著、公人の友社刊)が、参考になります。  藤沢町の条例・例規集は、町の公式サイト(http://www.town.fujisawa.iwate.jp/)で閲覧できます。

 

| TOP | BACK |