特集 2002年 地域はどう変わる

3. 住民参加 形式だけから協働、市民事業へ

2002/01/15
(オンラインプレス「NEXT212」64号掲載)

 

 合併によって地域の再生を目指すのか、自立の道を探るのか。国主導の公共事業に依存するのか、地域の独自性を優先させるのか。地方主権時代は、地域・住民の選択にかかっています。政策選択にどれだけ住民の意思を反映できるかが、大きな課題とされています。 

 米国の社会学者シェリー・アーンスタインは、住民参加を8ステップの梯子にたとえました。まちづくりという点で、私たちはどんな段階にあるのでしょうか。

 ■一方通行脱し、権利として明確化

 まちづくりの選択肢の一つである合併問題に関しては、群馬県の赤堀町が、公募した住民委員を中心とした合併研究懇話会を組織しました。政策のスクラップ・アンド・ビルドを進めるため、行政評価システムを導入したり、行政コスト計算の結果を公表する市町村も増えています。北海道の猿払村は「まちづくり理念条例」「村民参加条例」を制定しました。

 「参加の梯子」に当てはめると、これらの先進自治体は、中段の「形式だけの参加」から「上段の「住民の権利としての参加」の段階に迫りつつあります。しかし、なおまちづくりに関しては誰にどこまでどんな参加のしかたをさせるべきか模索しているのが実情です。多くのまちは情報公開の体制を整えた段階で、「一方通行の情報提供」か「表面的な意見聴取」にとどまっています。

 住民参加を権利として位置付け、実際に機能させていくためには、第1にその手続きやシステムが確立されなければなりません。第2に好ましいまちづくりに積極的に関わろうとする住民意識が絶対不可欠です。第3にそうした参加を支える環境が求められます。具体的にはいつでも関係情報が入手できること、組織化の財政的な支援や担い手の知的サポートなどの態勢づくりが求められています。

 ■新たな地域セクターが支えるまちづくり

 先進自治体では、「協働」から「権限委任」さらには「住民自身のコントロール」に任せる、といった取り組みもやがて出てくるでしょう。こうなると公共事業は、官民による「協働事業」へと変化し、「市民事業」へと形を変えていくはずです。住民が企画し、住民自身の手で実施する教育や福祉、環境保全、エネルギー開発といったものが誕生してくるかも知れません。

 これらのまちづくり事業の推進主体は、個々の住民であったり、企業であったりするでしょうが、より公共的な色合いが強い分野では、NPO、NGOが大きな役割を果たすはずです。こうした取り組みは、新たな地域産業・雇用の創出にもつながることから、参加の梯子をどう登るかは、まちの「勝ち組・負け組」を決定づける大きな分水嶺となると思われます。

 

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