特集 2002年 地域はどう変わる5. 住民・議会 目標共有型コミュニティの再構成 |
2002/01/21 |
まちづくりに住民参加の仕組みが整備されることにより、住民が行政の政策決定に関与する機会が、これまで以上に増えていくはずです。「地域のことは地域で考え、自ら決める」ということは、住民自身が責任を負っていくことにほかならず、まちづくりの方向・成否も住民次第で大きく異なっていくでしょう。 そこで住民に求められるのは、地域や行政についてきちんとした理解を深めることです。情報を共有し、議論の過程で進むべき方向を見出していくためには、行政職員と同様に、情報を読み解くメディアリテラシーが問われます。 さらに一定の住民意思を形成していくためには、共通の生活基盤に立ったコミュニティの再構成と言うことも必要になってくるでしょう。町内会・自治会的な組織が基盤になるでしょうが、一方通行の「上意下達」ではなく、いわば「ニュー井戸端会議」的なフォーラムの場が必要になってくると思われます。 こうした「地縁」でつながるコミュニティと同時に、環境や教育、福祉などのテーマの元に自発的に集合するコミッティ(住民会議)の組織化も見られるでしょう。 ■多様な地域セクターの協働行政との関係では、公的サービスの受益者として一方的に要求を提示するスタイルは、大きく変化していくことになります。先進的な自治体では、政策決定に市民が参画するだけでなく、行政と住民が共通目標を達成するために協力し、役割分担する協働型のまちづくりも進められるでしょう。住民組織だけでなく民間企業やNPOなど多様なセクターが行政とともに分業する目的達成形の市民事業・地域事業が展開されるようになると思われます。 住民意思を行政、まちづくりに積極的に反映させる手法として住民投票を活用したり、制度化する動きはさらに具体化すると予測されます。特に、市町村合併や広域的な利害が絡む「迷惑施設」の立地や、環境や財政に大きな負荷を及ぼす大型事業などの推進に当たっては、住民意思を量的に明確にする上で住民投票が選択されるでしょう。 しかし、行政・住民情報の共有が進み、パブリックコメント制度など政策選択や政策形成過程での住民参加の仕組みが定着していくことにより、住民投票を行う必要性は薄れていくと思われます。 ■議会情報の公開と政策能力にカギ住民自治の進展によって、その存在が大きく問われるのが地方議会です。議会をめぐる問題は体質的な要素が強いのですが、住民の付託に応えていくためには、@積極的な情報公開などにより住民と議会・議員との距離感を縮めることA議員個々の政策立案・行政監視機能を高めることが、重要な課題と言えるでしょう。実はこの二つのテーマは表裏一体の関係にあり、議会の内容をオープンにしていくことが、問題解決の第一歩になるはずです。 2003年の統一地方選は、議員を選ぶ有権者の目も問われるが、情報の受発信能力を備え、住民の知恵をネットワークしながら先鋭的に政策を提示できる「ハイパー議員」の登場が、地方を変える大きな力となるのでは。 (了) |