(2)まちづくりの新たな視点〜講義ノートから住民参加チェックリスト活用法 |
|||
2004/02/19 |
|||
講師:佐藤勝廣・北海学園大学教授=行政学・地方自治論専攻 「住民参画型まちづくりの推進方策」に関する調査研究会(財団法人・北海道市町村振興協会主催)の調査報告に基づく市町村職員研修会が去る2月2日札幌市で開かれました。ここでは、「まちづくりの新たな視点〜住民参加で変わる、変えられる、変えなくちゃ」をテーマとした佐藤勝廣教授の講演要旨を紹介します。佐藤教授は、2001〜2003年度の3か年にわたる研究会の座長を務めました。 <1>これまでのまちづくり施設・サービス充実競争の終焉●従来のまちづくりでは、国や都道府県の補助金を獲得することが大きな目的とされてきた。まちづくりの財政的な裏付けを確保する意味で、一つの合理的選択でもあった。 ●補助金目当ての事業、獲得をめぐる競争はこれからも続くだろうが、これに対する市民の目が厳しくなっている。 ●分権改革は、団体自治について充実させることが主たる狙いで、住民自治についてはほとんど進展がなかった。住民自治は、本来、住民自身が作り上げるものだから国がとやかく言うべき問題でもない。これから、それぞれの地域で充実させていくべきだろう。 ●補助事業を優先した従来型のまちづくりでは、その事業が自分たちのマチにどの程度必要なのか、優先度はどうかをほとんど考えない体質を持ち、全体のまちづくりとの関連はあまり重視されなかった。 ●しかし、これはパイの増加(財政規模の増加)を前提にしたサービス競争、施設建設競争であり、高度成長はほとんど期待できない現在においては、すでに破綻している。これまでのようなパイの奪い合いはできない、むしろ縮小する可能性が大きい。 ●これまでのまちづくり行政主導で来たが、実態は国の中央省庁の役人が指導してきたともいえる。例えば、リゾート開発は国の方針で強力に進められ、地元自治体がそれでどうマチを発展させるのか、将来像をきちんと考えて進めたケースはむしろ少ない。
<2>これからのまちづくり現状把握から始め、地域の知恵集める●第一に、マチの現状をどうつかむかが重要だ。企業の「SWOT分析」の手法を使って、わがマチの「強み」と「弱点」を探り出し、どこに「活路」があるかを探る。同時に「脅威」をきちんと把握するところから、はじめてマチの方向を見出すことができる。 ●ある程度は役所が主導して分析しておくことが必要だが、分析作業に住民が参加してもらうことも大事だ。これによって、役所と住民が考えていることの違いも見えてくるし、「見解の相違」で終わらせず、違いについて両者ですり合わせていくことも必要だ。 ●第二に、役所の情報を明らかにすると同時に、住民の側も情報発信することで互いの情報の質を検証しながら、情報のずれ埋めながら「地域知(ナレッジ)」として蓄積することが求められる。そこから初めて課題や解決策が見えてくる。 ●第三は、施策事業の目的・目標をきちっと設定するとともに、まちづくり全体としての目的に沿って体系化することが重要だ。「強み」を生かしながら「弱み」をカバーする、「脅威」もまちによって違うはずだから、中心的なテーマもマチそれぞれに違ってくる。 ●これまでのまちづくりの施策事業を評価することが起点になる。
<3>変わるための住民参加議論の場つくり解決策探り合う●住民参加によるまちづくりを進めるには、さまざまな手法がある。既に、多くの自治体が実施している住民アンケート・モニター調査についても、単に集計するだけではなく、結果をこれからのまちづくりにどう活用していくかが重要だ。課題を提示しながら、調査を継続して検証し、次に生かす工夫が求められる。 ●住民は必ずしも情報発信が得意であったり、議論になれているわけではない。したがって、できるだけ幅広く住民の声を聴くしくみが必要であり、議論の場を提供していくことが重要だ。 ●まちづくりをめぐる議論は、予め答えが分かっているわけではないし、単純に良い悪いの判断でもない。議論を通じて、課題を見つけ出し、解決の方向を探り合う作業を重ねることが求められいてる。互いの意思疎通を潤滑に行い、議論の成果を反映していく上では、コーディネーターやファシリテーターが必要になる。 ●住民参加がマチを変える起点となるが、従来型の「知らしむべからず、由らしむべし」の行政では、やがて住民の不満が蓄積し、「役所悪者論」が横行することになりかねない。まちづくりに新たな視点を持つことが今こそ求められている。
(了) |
|||