市町村合併を考える8-4

2001/4/30

 

合併論議をどう進めるか(4)

情報共有を基に住民の知恵結集

 西東京市に合併した田無・保谷両市の場合は、90年代初めから合併論議が重ねられてきました。具体的な地域のテーマとして合併論議が展開されたのは、93年の保谷市長選での公約が大きなきっかけとなりました。しかし、住民を幅広く巻き込んだ議論にはなかなか発展せず、「合併Q&A」と題した市民向けパンフレットが発行された96年ごろからようやく住民の間にも積極的に議論しようというムードが盛り上がり始めたのです。

■HP、広報誌を最大活用

  98年2月に任意の合併協議会が設置されると、合併をめぐるさまざまな情報が住民に向けて発信されるようになりました。同じ年の5月には、協議会の動向を伝える広報誌「合併推進協だより」の第1号が発行され、インターネット上にホームページも開設されました。  田無・保谷両市は、徹底した情報提供と住民を検討作業に巻き込むことで、着実に合併への歩みを進めて行ったのです。広報誌とホームページ、つまり活字とデジタル情報を平行させる形で、協議会での具体的なやり取りや、両市の職員の給与水準や公共施設の利用状況、料金など詳細な資料を市民向けに公開していきました。もちろん、合併のメリットだけでなくデメリットについても、、その対処策と合わせて積極的に外に出したのです。

■市民同士が対話、積極提言

  98年12月には第1回のフォーラムが開催されました。この種のフォーラムでは、行政や学識経験者らの意見や考えが一方的に流される傾向が強いのですが、合併・まちづくりを考えるための情報が日常的に提供されていたため、市民同士の対話と意見集約の場として活用されました。  前項で紹介した合併後の6つのプロジェクト案に盛り込まれた、シルバー人材の専門家登録制度や各駅に隣接した子育てサポートセンターの創設、市内循環のコミュニティバスの運行などのアイデアは、フォーラムや住民説明会を通じて市民から提起されたものなのです。田無・保谷のケースは、行政や住民に関する情報が地域の中でうまく循環し、単なるお知らせやデータにとどまることなく、まちづくりの知恵や力に発展していった好例といえるでしょう。  このことことからも、合併論議を住民参加の下で活発に展開し、合意や政策を生み出すためには、地域の情報システムを整備することや行政のコミュニケーション能力を高めることが重要といえるでしょう。 

 

 

| INDEX | BACK |