市町村合併を考える8-3

2001/4/30

 

合併論議をどう進めるか(3)


一選択肢として、まちを検証する

 全国に比べるとやや合併論議が低調な傾向を見せていた北海道においても、少しづつですが合併問題をきちんと検証しておこう、という動きが出てきました。道の最近の調査では、合併問題についてなんらかの検討組織を庁内に設置したり、設置を予定している自治体は、29市町村に上るそうです。また、十勝管内芽室町(NEXT212第26号・最前線リポート参照)や後志管内喜茂別町などのように、広報誌で合併問題についての特集を組んで住民に積極的に情報を提供する取り組みも目立ってきています。
 合併の議論は、議員や職員の定数削減や住民サービスの低下の懸念、さらには近隣自治体への配慮などから、これまでは敬遠されがちでした。しかし、少子高齢化や住民ニーズの変化、市町村財政の悪化などを背景に、これからのまちづくりを考える上で、避けて通れない課題として考えられるようになってきました。

■「なぜ」「どうなる」「どうする」
議論と協働

 合併が市町村にとって唯一の「生き残り策」ではありませんが、合併について考えることは、自分たちが住んでいるまちの現実を見直し、未来への道筋をどう付けていくか、を考えることにほかなりません。合併は一つの選択肢であり、その検討の過程で別の選択肢を見出すことも可能なのです。
 左の一覧表は、今年1月に西東京市として新しいスタートを切った保谷、田無両市が、任意の合併協議会の場で「検討すべき課題」として挙げたものです。「なぜ合併なのか」「合併したらどうなるのか」「新しいまちづくりをどう進めるのか」。この3つについて住民が合意するために、膨大な時間とエネルギーを注いで、検討作業が行われました。
 合併によらない広域行政による対応の可能性も検討され、それぞれの自治体の歴史や風土、産業構造についても議論が交わされました。現状を見直し、未来を見通す中から、6つのプロジェクト案も浮上してきました。住民と行政、議会の協働作業がうまく進められた例といえます。 

任意協議会での検討課題】

1.合併の意義
 (1)社会潮流から見た合併の必要性
   イ地方分権と合併必要性
   ロ高齢化と合併の必要性
   ハ生産年齢人口の減少と合併の必要性
   ニ変化の時代と合併の必要性
 (2)地域特性からの合併の必要性
   イ地域間競争時代と合併の必要性
   ロ地形的特性からの合併の必要性
 (3)広域行政の手法
   イ一部事務組合制度の概要
   ロ広域連合制度の概要
   ハ市町村合併制度の概要
   ニ広域行政制度に対する評価
2.合併の効果
 (1)合併効果の一般的な全体像
 (2)合併効果の全体像
 (3)一般的なデメリットに対する検証
 (4)具体的な合併効果の検証
  A 財政力強化
   1.管理部門経費の削減効果
   2.議員・職員減による人件費削減効果
   3.合併市町村まちづくり推進事業費
   4.地方交付税の特例措置
  B 行政力強化
   1.組織の再編成と人材の適正配置
   2.人材の有効活用制度の導入
  C 地域一体的なまちづくりの実現
   1.小中学校の学校区の見直し
   2.中学校給食の実施
   3.公園・緑地の整備
   4.市内循環バスの運行
  D 行政サービスの向上
   1.介護保険の充実
   2.施設見直しによる福祉サービス向上
   3.高齢者支援総合情報システムの構築
   4.地域情報化による住民参加の確立
  E 住民負担の軽減
   1.地方税の調整
   2.国民健康保険料(税)の調整
   3.各種使用料・手数料の調整
3.合併のねらい
4.新市のまちづくりの基本的な考え方
5.プロジェクト案
 (1)「地域の中で支えあう福祉のまち」
 (2)「環境に優しく美しいまち」
 (3)「若者を育てるまち」
 (4)「安全で快適なまち」
 (5)「さまざまな産業が育つまち」
 (6)「市民が参加する活力あるまち」

 

 

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