続々・市町村合併を考える2-3

注目自治体のその後(3)広島県・江能合併の場合

2002/02/25

 

 住民意思どこに、多数決に落とし穴

 広島県の江田島湾を挟んで広島市と向かい合った江田島・能美島の4町(江田島、能美、沖美、大柿)は、同じ島の隣人同士として89年に江能広域事務組合を設立するなど、広域連携に力を注いできました。水道、ごみ、消防など身近な生活に関わる公共サービスは、効率性の面などで連携の成果を発揮し、合併もこうした取り組みの延長線上で浮上してきました。

 ■全国公募で多数を占めた「江田島市」

 2000年4月の合併研究協議会設置から約1年で法定協議会に移行し、2000年11月の住民意識調査でも「合併賛成」が59.8%占めました。4町長も、2002年4月の合併実現に向けて結束して、動きました。2001年12月23日には、10回目の合併協議会が開かれ、「新市建設計画(素案)」についての協議も行われるなど、最終段階を迎えました。

 第10回法定協では、全国に公募した新市の名称の「名付け親」に対する記念品贈呈の抽選回も行われました。応募総数は1万7007件にも上った案の中で、最多の1万1172票を集めた「江田島市」に決まったのですが、名称採択をめぐって異論の声も上がりました。

 ■強行採決に能美町が反発

 新市の名称決定については、第8回法定協の場で、小委員会が応募名称の中から選考した5件について無記名投票によって行われました。結果は「江田島市」24票、「南広島市」15票、

棄権1票の多数決で「江田島市」に決着したわけです。採決に当たり、委員の中から「対等合併である以上、旧町名を使うのは好ましくない」「住民アンケートにより、改めて5候補から選んではどうか」といった慎重論が出されたものの、結果的に強行採決の形となったのです。

 このため、能美町議会は「独立した自治体・地域住民の意志が全く反映・尊重されず、将来にわたる当町の在り方や住民に大きな不安と不信感を与えた」として今後の協議会運営に当たっては、地域住民らの意向を無視することのないよう求める決議文を採択、法定協に申し入れました。

  この問題が今後の流れに直接影響することはなさそうですが、名称一つにも住民それぞれの思いやこだわりがあり、単純な多数決では決められない難しさを市町村合併がはらんでいることを象徴する出来事でした。

 

【合併協議事項一覧】

●合併の方式
●合併の期日
●新市の名称
●新市の事務所の位置
●町字の区域・名称
●財産及び債務の取扱い
●新市の慣行の取扱い
●事務機構及び組織
●条例、規則等の取扱い
●議会議員の定数・任期
●農業委員会の定数・任期
●地方税の取扱い
●一般職の職員の身分
●特別職等の職員の身分
●一部事務組合等の扱い
●使用料、手数料の扱い
●公共的団体等の取扱い
●補助金、交付金の扱い
●国民健康保険事業
●介護保険事業
●消防団の取扱い
●電算システム事業の扱い
●都市計画に関する取扱
●各種事務事業の取扱い
●江能広域事務組合の扱い
●公営事業等の取扱い
●広域行政組合の取扱い
●第三セクター等の取扱い
●各種福祉制度の取扱い
●水道事業の取扱い
●下水道事業の取扱い
●町立学校通学区域
●広聴広報関係事業
●納税関係の取扱い
●防災関係の取扱い
●保健衛生関係事業
●公の施設の取扱い
●人権対策関係事業の扱い
●農林水産関係事業の扱い
●商工観光関係事業の扱い
●建設関係事業の取扱い
●学校教育関係の取扱い
●社会教育関係の取扱い
●社会福祉協議会の取扱い
●都市計画関係事業の扱い
●その他各種制度の取扱い
●新市建設計画

 

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