特集 2001年 地域はどう変わる

2001/01/19

2. 市町村合併

多様なコミュニティが割拠、連携

 地方自治体の財政難を克服する手法の一つとして市町村合併は、クローズアップされていくでしょう。しかし、行政サービスの効率性の追求に片寄った合併には、落とし穴も潜んでいます。21世紀は、中央からの分権の受け皿として地方を考えるのではなく、コミュニティから地方、中央のあり方を見直す動きへと変化し、これに伴って、新たな地方再編が進むと考えられます。

■「効率化・受け皿」に限界

  地方行政においてもスケールメリットが働くことは、右のグラフからも分かります。住民1人当たりの年間コストは、5万人規模を超えると40万円台に平準化され、2万〜5万人規模の中間層を挟んで、1万人を割り込むと一気に100万円台に乗ります。北海道の場合、単純には町村部を人口5万人で括って、全体で50市前後にすれば、約20%のコスト削減を実現できる計算になります。  

 地方分権を看板にさまざまな特例措置を講じて合併を推進する背景には、こうした計算もあるわけです。しかし、政府が思うように合併が進んでいないのも現実です。  

 その要因は、都市の5倍もコストがかかる人口5千人未満の町村でも、財源不足は地方交付税で補填され、「過疎債」といった有利な借金の道もあるからです。合併は吸収されることを意味し、町長や議員といったポストも減るわけですから、住民発議があっても、町長や議会が壁になるのは、ある意味で当然の結果ともいえます。

■「地方主権」下から変革

  当面は2005年3月が期限の特例措置の延長や優遇策の拡充、住民発議制度の強化など合併推進のための「飴とムチ」の政策が焦点となりそうですが、やはり公共事業や税の配分など財政に関わる方向の確立がなければ、地方分権の「受け皿」づくりは進まないでしょう。

  地方の再編はむしろ、国・中央からの働き掛けによるのではなく、市町村あるいはさらに細分化されたコミュニティから地方を形作ろうという動きが高まってくるのではないでしょうか。その胎動は、最大の地方である東京都や北海道ではニセコ町などに既に表れてきていると思います。

  合併問題も、地方への税源移譲や住民参加の進展、情報ネットワークの活用などによって、変化して行くはずです。そこでは「生活者の視点」が重視されますから、多様なコミュニティが群雄割拠しつつ連携し合う、これまでにない形の地方が作り出されていくのではないでしょうか。

 

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