特集 2001年 地域はどう変わる

2001/01/26

3. 住民参加

「お上頼み」から「協働社会」へ

 「地域開発」「都市計画」という言葉が「まちづくり」という表現に置き換えられたのが、20世紀の終わりでした。行政主導によるハード重視から、身近な暮らしに視点を置いたソフト重視への転換でもありました。

  しかし、現実には「まちづくりの主役」の顔は、まだおぼろげです。ちょうど1年前の吉野川可動堰建設をめぐる住民投票は、大きな行政の流れをせき止めた点で画期的であると同時に、住民の意思表明の手段が極めて限定されたものであることを印象づけました。

■地方主権時代を担う者は

  「地域のことは地域で決める」という地方自治は未だに成熟せず、100年かかっても「民主主義の学校」を卒業できない現実があります。「分権」は叫ばれても、「地方主権」の実体はなかなか見えてきません。

  21世紀が地方主権の時代に成長できるかどうかは、「分権の受け皿づくり」だけでは不可能でしょう。おそらくは、このことに気付いている町や村(の住民)だけが、「勝ち組」に残るチャンスを手にするでしょう。 

 皮肉なことに、地方の深刻な財政危機が、「まちづくり」を見直すきっかけとなっています。首長は、これまでのように「あれもこれも」の政策は困難となり、「あれかこれか」の選択が迫られるようになってきたからです。少ない財源で、最大の行政効果を上げるためには、「住民意思」を的確に政策に反映させる必要があるからです。

■政策選択に住民意思を反映 

 政策決定に住民の声を反映させる手法として、これまで形式的・権威主義的な色合いが強かった審議会や委員会に一般住民をできるだけ加えようという動きも、その一つです。情報公開から一歩踏み込んだ積極的な行政情報の提供や、計画段階から住民を参画させるしくみづくりなど、住民を行政に巻き込んでいく「パブリック・インボルブメント」は、地方主権時代へ向けた重要な取り組みとなって行くはずです。

  一方、住民も、「待ちの姿勢」でいることはできなくなります。「お上頼み」から「協働」へ。まちづくりの役割分担が、重要なキーワードとなるでしょう。行政の枠組みの中に住民が単純に加わるのではなく、新たな方向性を持った行政と住民が、互いに水平の関係で、しかも緊張感を保ったパートナーとして力を合わせることが求められます。

■多様な地域セクターが分担 

 まちづくりを担う地域のセクターは、住民個々、団体、企業、そしてNPO、NGOといった多様な存在であり、中でもNPOが大きな役割を果たすと予想されます。その過程で、住民参加の権利と義務を明確にした「まちづくり条例」や、NPOなどの活動の育成・支援体制の整備などが、当面の課題となるでしょう。

  住民の意思が十分行政に反映されるシステムが整備されない場合は、住民個々が望ましいと思う自治体に移り住む「足による投票」という事態も、そう遠くない将来に起こり得るのではないでしょうか。

 

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