特集 2001年 地域はどう変わる

2001/01/26

4. 行政評価

住民参加広げ政策論議を活性化

 一定の目的に沿って行政活動を評価し、その成果を改善につなげていく行政評価は、市町村の行政改革を進める上で、有効なマネジメント・ツールと考えられます。特に、厳しい地方財政を背景に、行財政の効率化を目指して導入する自治体が増えていますが、単に役所内部の改善運動にとどまらず、まちづくりに対する住民参加を広げる機能にこそ、行政評価の本質があることを見逃してはなりません。

■住民を巻き込み政策論議

  そうした意味では、これまでの取り組みは、まだ行政内部の動きにとどまっています。このため、目標の設定が行政サイドの主観よるところが大きく、「住民にどんなメリットをもたらしたか」という成果に対する視点も、やや甘くなっています。行政の組織目標が明確化され、戦略的な思考の高まりも見られますが、行政評価を通じて行政と住民が情報を共有化し、住民を巻き込んでの政策論議にまで高める土壌づくりは、まだ不十分といえます。

  成果主義に基づいた行政評価の導入が、なかなか進まないのは、予算削減やコストカットなど、いわゆる「リストラ行政」の理由付けの発想が潜在していることもあるようです。元々、日本の行政は、前例主義や単年度主義に片寄り、評価ということを苦手としてきたことも背景にあるのでしょう。

■町村の試行錯誤積み重ね

  また、行政評価システムの標準的なマニュアル化が叫ばれ、多くの自治体が導入については「待ちの姿勢」にあることも気になります。行政評価は、「まち」そのものの「生き方」を問い直し、道を付けるためのものですから、212の自治体があれば212通りのシステムがあるはずです。 

 行政評価のシステムづくりの過程そのものが、行政のあり方を見直すきっかけであり、住民参加を広げる場でもあります。そして、都道府県や大都市などよりも住民と直接向き合っている市町村こそが、率先して取り組むべきテーマが行政評価だと思います。当分試行錯誤は続くでしょうが、むしろ規模の小さな町村の取り組みの積み重ねが、標準的な評価システムのベースになっていくと考えられます。

■情報共有化をステップに

  行政評価システムを定着させる上で、避けて通れない課題がいくつかあります。一つは、行政と住民とのコミュニケーションの確立です。行政サイドの取り組みとしては、公開にとどまらない積極的な行政情報の提供による「地域情報の共有化」が重要となってきます。特に広聴広報機能の拡充が、住民参加を広げる第一歩となるでしょう。

  次に、行政評価を行政と住民、あるいは住民同士の「共通言語」とし、これを基にした政策論議を高めることが必要です。特に、行政に対するチェック機能、政策評価・立案機能など、議会のあり方も変化が求められるでしょう。

  もう一つの課題は、自治体のインセンティブ(改善意欲)を抑制している地方交付税制度など国政レベルでの行政システムの改善です。いわば地方自治をめぐる構造的な問題の解消は、政府の対応を待つのではなく、地方から声を上げていくことが必要です。

 

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