ニセコ式コミュニケーションツール活用法(1)

2002/03/11
(オンラインプレス「NEXT212」71号掲載)

 

 説明・陳情型から情報共有型へ

 住民参加型のまちづくりを進める上で不可欠なのが、住民と行政の情報の共有です。行政が何を目指しどう政策・施策を進めているのかといった「行政情報」が、きちんと分かりやすく住民に伝えられていること。また、住民がどういう状況にあって何を求めているのかといった「地域情報」が、行政に正しく把握されていること。双方向の情報の受発信と、共通の認識に立って、問題の解決や目標の実現に知恵を集めることが、求められています。

 ■多様なチャンネル使い情報発信

 情報共有の土台となるのが、住民と行政のコミュニケーションであり、情報化の進展とともにさまざまな手法や道具立てが工夫されるようになってきました。2001年4月から「まちづくり基本条例」を施行した北海道ニセコ町の場合は、多様なコミュニケーションツールを上手に活用している自治体の一つと言えます。

 行政情報の発信手段としては、広報誌やインターネットのほか、電話回線を利用して1日3回の定時放送を行う「そよかぜ通信」などさまざまなメディアを活用しています。全戸配布の「もっと知りたいことしの仕事」は、住民向け予算説明書の先駆けとして、モデルにもなっています。

 行政情報の発信=広報にとどまらず、地域情報を積極的に取り入れようとする広聴に力を注いでいるのも、大きな特徴です。一般に予算説明会などは一方的な説明や要望の聴取にとどまりがちですが、広報の徹底が、こうした場における双方向のコミュニケーションに深みと広がりをもたらす効果を上げています。また、住民グループと町長、課長による「まちづくりトーク」や町長室の開放など、日常的に住民との対話のチャンネルを設けていることも、説明・陳情型の場をまちづくり論議の場に高めています。

 ■住民の目線・地域の視点で考える

 職員による出前講座・町民講座は全国的な広がりを見せていますが、多くが住民に不評なのは、基本的な職員のコミュニケーション能力の不足と説明型の運営法にあります。ニセコ町の町民講座は、「住民と職員が互いに行政の仕組みや役割を学び合う中からまちづくりを考える」ことに力点を置き、いわば視点を住民の目線に合わせていることに特徴があります。

 情報の積極的公開と共有が進むことによって、住民がごく狭い居住地域のことだけでなく、他の地域も含めた町全体にも目を向け、考えるという効果ももたらしています。そんな具体的な取り組みを、ごみの最終処分場計画をめぐる住民参加の例で見てみましょう。

 
 

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