市町村合併の論点(1)〜地方制度調査会の動きから |
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2002/07/22 |
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1. 小規模町村 「補完」「格下げ」俎上に小規模町村の自治の在り方などを検討している首相の諮問機関・地方制度調査会の論点が出そろい、早ければ年内にも中間報告がまとめられる見通しとなっています。基礎自治体の位置付けから道州制導入まで、踏み込んだ議論が予想されます。 「論点」は大きく分けて、基礎的自治体の在り方、大都市の在り方、都道府県の在り方、地方税財政の在り方〜の4つの柱で構成され、このうち、基礎的自治体に関しては、「そもそも基礎的自治体をどう考えるか」という原点から検討が加えられるようです。その上で、基礎的自治体が担う役割・機能と、都道府県などとの関係を整理していくことになります。 ■基礎的自治体の根本を見直しその中で最大の焦点となるのが、財政事情などから基礎的自治体としての役割を全て担うことが困難な小規模町村の扱い。対応策としては、(1)合併をさらに強力に推進し小規模町村を解消する(2)行政の一部を都道府県や近隣市など他の団体が補完する(3)基礎自治体としての法人格を認めず権限が限定された行政区などに格下げする〜といった課題を検証することになりそうです。 合併強化については特例措置期限の延長なども考えられますが、総務省は一貫して否定的な姿勢を取っており、焦点は特例措置以降の小規模町村の整理をどう考えるかに移っている感が強い。特に、「合併できない・しない」町村の「補完策」と「格下げ案」が実質的な論議の的になると考えられます。 このうち、「格下げ案」は地方自治の根幹に関わる問題で、関係自治体に波紋を広げることが予想されます。地方制度調査会の総会の席上、山本文男・全国町村議会議長会会長(広島県神辺町議会議長)は「2級町村復活のごときものは論外」と早くも絶対反対の姿勢を示しています。
2. 「住民自治」の視点で広く論議を地方制度調査会が論点整理の中で検討項目に挙げた、小規模町村の「格下げ案」は、ある意味で究極の市町村再編策ともいえます。その論理は、次のようになります。 地方分権を推進するためには、市町村は一定の規模が必要だ〜そのためには合併が早道で、期限を切って合併を目指す所には特例措置を講じる〜合併できないまち・しないまちは分権時代の地方自治を切り盛りできない〜よって自治体の法人格を召し上げ限定的な行政区に格下げする。 ■全国の47%が「2級町村」候補?「自治体ではない、限定的な行政区」とは分かりにくいのですが、それに近い例として挙げられるのが「2級町村制」で、1897(明治30)年に北海道だけを対象に公布された地方制度です。札幌、小樽、函館に区制がしかれ、1級は16町村、その他は2級町村とされました。1級は概ね府県の町村制と同じでしたが、2級町村では納税などを条件に自治に参与する権限を住民の一部に認める「公民制」がとられず、町村、助役の任免権も北海道庁長官が持っていました。 村税や補助金を元に土木、衛生、教育などの事業を行ってはいても、住民の自治権はないに等しく、実質的に道庁の管理下に置かれていたといえます。それだけに、小規模町村を中心に「格下げ案」に対する警戒感が今後噴出することも予想されます。 「格下げ」については、昭和の大合併の際にも当時の自治省内で検討された経緯があります。このときは、合併後の人口規模の目安を8千人以上としましたが、今回は基礎自治体の位置付けや都道府県などによる事務補完との関係で、「線引き論」が浮上することも考えられます。仮に「1万人未満」を目安とすれば、全市町村の約47%、1500以上が対象となる計算です(北海道では70%)。 【北海道における人口規模別の市町村数】 ■垂直補完か水平補完方式か
小規模町村が担い切れない行政の補完策として調査会は、都道府県が引き受ける「垂直補完」と、それ以外の近隣自治体や広域連合などが引き受ける「水平補完」を検討課題に挙げています。この問題も基礎自治体とその役割・機能をどう考えるか、都道府県の在り方、さらには広域的な連携の見直し、民間セクターの活用などとも関連しており、「住民自治」の視点に立った柔軟で広汎な論議が期待されます。 また、「地域のことはそこに住む住民の意思に任せる」という住民自治の考えに基づけば、全国共通の基準や枠組みを決めるのではなく、そうした仕組みも住民に選択させるような発想も必要だと思います。 3. 柔軟な発想で「自治の姿」を考える「基礎的自治体」は、国家と同様に、一定のエリアに住民が共存し、その地域の運営に関する決定権が住民に託されていることが要件といえるでしょう。ただし、その決定権がどこまで及び、どのような形で運営されるかについては、さまざまな形態が考えられます。地方制度調査会では、基礎的自治体が担うべき役割・機能を整理すると同時に、組織体としての在り方にも踏み込んだ論議をしようとしてます。 ■多様性認める米国、垂直補完のフランス整理された論点を見ると、基礎的自治体を全国共通のタイプに当てはめるだけではなく、多様性を認める道についても検討を加える予定です。日本では市町村が基礎的自治体となり、中央政府との間に広域的な自治体として都道府県が存在します。都道府県、国が上位にあって、画一化された地方制度ですが、世界的には非常に多様な基礎自治体を抱える国もあります。 米国の場合は、州直轄の法人化されていない地域もあれば、カウンティや日本の広域連合的な団体に業務の一部を任せる自治体もあります。形態も多様であれば、どのタイプを選択するか住民に任されているのも特徴です。 フランスの場合は、平均人口約1600人という小規模な市町村(コミューン)が、日本の10倍の約3万6千もあります。行政の効率性の面からは日本以上に合併が求められそうですが、国の出先機関や県などが補完的に地方の事務事業を担っているそうです。 ■合併の一方で「地域自治」目指す北欧米国やフランスに比べて自治体数が極端に少ないノルウエーやスウェーデンは、合併による市町村の再編が進められた結果で、大型化した基礎自治体に多くの権限が託される一方で、基礎自治体の中に地区協議会(ネイバーフッド・カウンシィル)を設けて「地域自治」に取り組む工夫も見られます。 また、英国の場合は、日本では市町村が担っている業務の多くを、官民のさまざまな機関、団体、企業、ボランティアが分担しているのが特徴といえます。 このように基礎自治体のタイプや役割・機能はさまざまですが、必ずしも画一的なシステムにとらわれず、より柔軟な地方制度を考えていくことも必要で、むしろ地方から新しい「地方自治の姿」を積極的に提案していくことも求められています。 【基礎自治体の主要国比較】
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