<1> 市町村合併をめぐる議論に対する3つの期待と現実
「再生・創造」に発展しない合併論
合併論議をきっかけにして、新たな変革のエネルギーに火が灯るのではないか
(1)意識に対する期待:リストラ思考・限界論から再生思考・創造論への転換
「できないんだ」のあきらめから「できるはずだ・やらねば」の攻めへ
現
実 |
- 無駄が省ける=リストラ効果、特例債があれば=おまけ効果への期待に片寄る
- 1+1=3以上にするためのプラスアルファ効果に目が向けられない
- 「逆転の発想」「ライフボートロジック」といった柔軟な思考が発揮されない
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結果的に財政の限界論に終始し、縮こまりの議論だから住民の関心も高まらない
(2)主体に対する期待:住民参加と職員の意識改革が同時進行する
「中央への従属・オカミ頼み」から自律・さらに自立へ
現
実 |
- 溢れる「火の車情報」の結果、「痛み」を我慢しなければならない状況は理解
- 住民参加・意識改革の必要性に対する認識は高まっている
- だが、再生・創造のために智恵を凝らす・汗を流すところには至っていない
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(3)目標に対する期待:地域の見直しと新しい資源の発見・活用
眠っていた・埋もれていた「宝」に光を当てる、地域産業・文化の振興へ
現
実 |
- リストラの効果論が大勢を占め、産業文化の振興論に発展しない
- 結果的に?恣意的に?庁舎立地や議員特例をめぐる議論に終始しがち
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合併・自立をめぐる議論は、まちづくりの目標を再確認し、そこに至るためのルートや方法を再検証する、積極的・建設的な議論に発展させていくことが望まれる
<2> 持続可能な自治体経営の展望
「縮小再生産」の発想に限界
●切り詰め型の経費節約・住民サービスの縮小・住民負担の拡大
●人材、住民サービスの劣化・若者の流出・超過疎の進行へと悪循環
●役所は残ったが、住民がいない。職員という住民のためにマチがある?
自治体の規模の大小にかかわらず、「縮こまり思考」では展望は開けない
<3> 住民自治への突破口・方法論
フォーラム広げ、柔軟な発想に立て
住民自治=縦の統治から横の連携へ
横の連携=価値の共有と問題解決のための協働
そのためのよりベーシックな課題
●「生活領域が密接に重なり合う人々の絆=コミュニティのネットワーク」が重要
●「協働によるまちづくり」の基盤となる「コミュニティの再生」が求められている
突破口は、「3つの期待」に立ち戻って。
(1)再生・創造に向け、柔軟な発想に立つ
・ 既成概念に捕らわれない(官から民の視点へ)
・ 規制の枠を取り払う
・ 若い智恵を注ぎ込む
・ 老人の智恵や力を生かす
・ 「二者択一論」からの脱皮
(2)智恵を寄せ集めるフォーラムを広げる
・ 地域の難題は結束、協働のチャンス
・ 意見の対立は良い結論を導く
・ コミュニケーター、コーディネーター、ファシリテーターの存在
(3)足元に眠る宝に光を当てる
・ 地域の産業文化の振興=新しい価値を創造していく
・ 夢や希望の「原石」を見つけ出す
<4> 地域自治組織の可能性
連携・協働が市民事業を育てる
●自立のカギは、地域内連携と広域連携、住民やさまざまなセクターと行政の協働にある
●市町村の大小にかかわらず、一定の地域的な広がりの中で住民同士が横に連携し協働するためのしくみが必要
●合併議論では、合併推進の激変緩和・緩衝材的な色彩がある(合併特例区)
●地域内分権も、行政府による統治の枠内で、「受け皿」的な一面がある(地域自治区)
●住民相互の連携と協働の側から派生した自治組織が望まれる
●真の住民自治=「オカミ支配」からの脱却のためのチェックポイント
(1)住民と行政の役割分担について双方が十分な理解に立っているか
(下請け・受け皿の発想からの脱却)
(2)基盤となる自治会・町内会が機能不全に陥っていないか
(3)住民個々に自助や相互扶助の意識が醸成されているか
<5> まとめ
●行政サービス化した公共サービスを、協働の考えに立った市民事業に変えていくことが重要であり、それに伴って行政の機能も、大きく変化していく
●小規模自治体であろうと、今は大きな都市であろうと、その地に人が住む理由がなくなると、マチは衰退していくほかない
●合併か単独自立かに関わらずまちづくり議論の中で、見落とされがちであり、軽視されがちだが、地域の産業や文化をどう育てていくかという課題が重要だ
●大きなマチにとって小さなマチが、都市にとって地方が「お荷物視」されている現実は、変えていかなければならない。むしろ、「田舎」や周辺部で沸き起こる変革が、都市や中央を変えていくことを期待したい
註:本稿は、「NEXT212」主筆・梶田博昭(地域メディア研究所代表)による最近の講演録を再構成したものです
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