212の21世紀〜マチは変われるか

第3部・情報編

 5.参加の階段
 プロセス段階から住民が参画/白老、ニセコの試みから

 胆振管内白老町では九七年八月から二年がかりで情報公開条例の制定作業を続け、今年一月から施行に踏み切りました。ここで注目したいのは、当初から制定過程が公開され、さらに町民の参加の下で進められたことです。作業のスタートに当たっては住民集会で条例の必要性や意義について意見交換し、中間報告も詳細に公表しました。住民の声をできるだけ反映させるために、十人の民間人を検討作業に加え、うち三人は一般から公募しました。

 プロセスを絶えず公開することで条例に対する住民の意識が高まり、利用する側に立った意見や工夫も出されました。情報公開を条例制定を前に先取りすると同時に、住民参加を実現していった良い例といえます。

 ■職員の意識改革進む

 作業の過程で、職員は「積極提供」の重要性に目が向き、「どうしたら住民にきちんと伝えられるか」という論議にまで発展していきました。単にルールを作るだけでなくそれを生かすための具体的な運用にまで意識が向いていったことは、住民参加が職員の質も高めることを証明しています。

 権力と住民参加の考え方を社会学者のシェリー・アーンスタインは「参加の梯子」という図式で表しましたが、住民の側がどう参加していくかは六段階のステップで表現することができます。梯子に対して「住民参加の階段」とでも名付けましょうか。

 最初のステップは、「聞く・知る」ところから始まります。広報紙などを読むことや市役所に照会すること、グループで見学することなども含めて、情報を収集することが参加の第一歩となります。第二段階は、得られた情報を基に点検や評価、比較をする「考える」こと。そうした点検の結果から今度は「要求・提案」の段階にステップアップします。ごみ処理についての苦情や、公共料金の引き下げ要望などもこの中に入るでしょう。


 ■一方通行から双方向へ

 これまで一般的に言われてきた住民参加は、概ねこの段階までです。町政懇談会で町長が地区を回りながら住民の意見を聴くとか、市政モニターを委嘱するといった形が取られます。どちらかというと「一方通行」型といっていいでしょう。

 最近は、職員が個別のテーマについて住民と直接やり取りする「出前講座」や町長室で懇談に応じたり、インターネット上で一問一答を交わしたりといったコミュニケーションが重視される傾向も見せています。いわば住民と行政との間のコミュニケーションが「双方向型」にシフトされてきているのが特徴です。

 第四段階では住民がより直接的に行政に「加わる」という形を見せます。白老町の条例制定作業のように住民が条例づくりや計画づくりに参画して、行政もこれを積極的に政策や施策に反映するという形態です。
 さらに行政と住民とのパートナーシップにより政策の実現や事業の推進を図る段階を経て、最上段では住民自身が管理・運営することになります。いずれにしても参加の度合がステップアップするほど、情報の共有が重要な要素となります。

 住民参加によるまちづくりは情報の共有化が重要なテーマだと考えたニセコ町では、町民が町の情報を活用したり、将来にわたってまちづくりに参加できる仕組みを定めた「まちづくり基本条例(仮称)」の制定に着手しようとしています。情報の「公開」から「活用」への進化ともいえます。インターネットなど情報インフラの高度化や外部へ向けた情報発信といった動きとは異質な地域情報化の仕組みづくりを注目したい。