212の21世紀〜マチは変われるか
第3部・情報編 8.出前講座 行政という舞台の上では、コミュニケーション(会話)というのはなかなか難しい側面を持っています。何よりも意思を伝達する手段の「言葉」がやっかいな存在です。行政用語やお役所言葉が、しばしば住民を戸惑わせてしまうからです。 指針は開発局内部に向けられたものですからこれでもいいのかも知れませんが、表題の「アカウンタビリティ」や「VE」など一般にはなじみの薄い表現があちこちに出てきて、気になります。 職員がまちに出て住民を相手に直接対話する「出前講座」は道内でも少しづつ取り組む自治体が増えてきています。住民参加の基盤づくりとして評価できる試みですが、必ずしもうまく進んでいるともいえないようです。「まちづくり出前トーク」を昨年八月から始めた三笠市の場合は、二人以上の要望があれば出向くという利用のしやすさが特徴ですが、まだ数件の利用にとどまっているそうです。 出前講座がなかなか定着しない主な要因としては二つあります。一つはせっかく双方向のコミュニケーションを目指していながら、行政についての基本的な情報が十分に住民に伝わっていないことです。話をする土台がないから、住民の側は何を聞いていいのか、どんな話をしてもらえるのか、そもそも役所が何をやっているのか分からない、ということがあります。 専門用語はできるだけ一般にも分かりやすい言葉に置き換えるべきでしょうが、厳密な定義付けから来る行政用語については、置き換えることのマイナス面もあります。従って、用語そのものよりは、職員個々のコミュニケーション能力を高めることの方が大事かも知れません。 「出前講座」からさらに進んだ住民参加の段階になると、コミュニケーション能力は非常に重要なものとなります。今後は、住民ニーズを積極的に汲み取るヒヤリング(聞き取り)やサーベイ(調査)に重点を置いた大学の講座などを通じて人材教育を進めたり、職員研修に取り組んでいくことが課題になるでしょう。 また、米国には、市民参加の場で専門的な用語や制度を分かりやすく住民に説明したり、住民の考えや要求を整理しこれらをどう政策に反映したらよいかを伝える「ファシリテーター(助っ人といった意味)」と呼ばれる専門家がいます。プランナーやコンサルタントを含めてこうした民間の力を活用することも今後の課題となってくるはずです。 |
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