対象広げ、意思決定を透明化
政府は、99年3月の閣議決定で「規制の設定または改廃」の際の意見提出手続、つまりパブリックコメントを義務付け、現在、ほとんどの省庁が、この方式を採用しています。しかし、パブリックコメントの考え方が十分に生かされているかというと、少し疑問です。
■政府、結果の49%非公開
第一に、対象が国民に対する規制の設定・改廃に伴う政令・省令の策定などに限られ、法律策定が対象外とされている点です。第二は、提出された意見の処理については「これを考慮して施策を決定する」とするだけで、意見をどう活用したのか不透明なことです。
特に、結果の公表に関する総合研究開発機構の調査では、閣議決定案件の結果公表は約79%でしたが、それ以外の任意の案件については約51%しか公表されていませんでした。パブリックコメントは、政策の決定過程をオープンにすることと、行政と住民(国民)との間の信頼の確保が生命線だけに、問題が残ります。
■市民参加の手法として明示
多くの先行自治体は、パブリック・コメントの活用について「要綱」「大綱」といった形で制度化しています。これに対して横須賀市が「条例」の形でパブリックコメントの導入を目指しています。これは、政策決定過程での公正確保と透明性向上を目的とするだけでなく、パブリックコメントを市民参画実現のための「一般的ルール」と規定し、重要な意思決定手法と位置付けようとしている点に狙いがあります。
したがって、パブリックコメントの対象は、一般的な行政の基本方針や住民に義務を課したり、権利を制限することを内容とする内容の政策・施策にとどまらず、より幅広い政策や計画についても、住民の意見を聞くことを行政に義務付けようとしています。また、手続き開始の「予告」を規定するとともに、意見提出までの日数を一定期間確保したり、手続き責任者の配置によって責任を明確化するなどの工夫を凝らそうとしています。
■パブリックコメントの対象〜岩手県の場合
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次に掲げる計画、条例等の案を策定するときはパブリック・コメントを行う。
(1)県の施策に関する基本的な計画の決定又は変更
(2)県民に義務を課し、又は権利を制限する条例(地方税の賦課徴収、分担金等徴収に関するものを除く。)及び制度の制定又は改廃
(3)広く県民の公共の用に供される施設の建設に係る基本計画の決定又は変更
パブリック・コメントを行うことが、そのことに要する時間、費用等の面から明らかに合理性を欠くと認められる場合は、その手続の全部又は一部を行わないことができる。
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第1項に該当しないものであっても、制度の趣旨に照らしパブリック・コメントを行うことが望ましいものについては、当該手続を行うように努める。
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