地域レポート

陸別、足寄、本別3町長
「地域と地域が手をたずさえるシンポジウム」(1)

基調講演

2001/11/19

 市町村合併の動きが急加速する中、北海道十勝支庁管内の陸別、足寄、 本別の3町長が公開の場で広域連携について意見を交わすシンポジウムが 11 月19 日、本別町で開かれました。3 町合わせた面積が神奈川県に匹敵する地域での初めての試みに、住民の関心が集まりました。その内容と、参加住民の感想・意見を報告します。

主催:十勝東北部銀河の里づくり協議会
会場:本別町中央公民館大ホール

パネリスト

金沢紘一・陸別町長(1943年陸別町生まれ、現在3期目)
香川博彦・足寄町長(1935年足寄町生まれ、現在2期目)
高橋正夫・本別町長(1951年本別町生まれ、現在2期目) 

コーディネーター

横山純一・北海学園大学法学部教授


主催者あいさつ(十勝東北部銀河の里づくり協議会会長 高橋正夫・本別町長)


 地域と地域が手をたずさえるシンポジウムという題を付けさせていただきましたが、もともと銀河の里づくり協議会を3町で運営しながら広域行政の推進、行政効率を高め、住民の皆様への行政サービス等を視野に入れながら取り組んでまいりました。更に、消防・衛生行政、来年の12月からは3町でのゴミ処理、リサイクル等を含めて、これからは単独で行政を進めていくのは難しい時代になりました。

 財源が裏付けとして下りてこない。少ない財源の中で地方の台所で、いかに効率よく行政を進めていくかということもありまして、私どもがそれぞれ考えているまちづくりや、地方行政・町村の合併問題を含めて3町が情報を共有しながら進めていきたいと思っています。住民生活の実態を配慮した中での広域行政の在り方、連携、合併が良いのか悪いのかを含めて、お考えいただきたいと思います。


基調講演】 横山純一北海学園大学教授


 ■問われる地方の「自己決定」

 高橋町長のご挨拶でもありましたように、自治体を取り巻く状況というのは20年前と比べると大きく変わっています。1つは、一昨年の7月に地方分権一括法というのが施行されました。地方分権一括法が施行されたことによって、自治体の職員の仕事が今までとは変わったということではないですが、これから税財源等の問題を含めまして、地方が自分たちのことを自己決定していく。自分たちで選び、決定していくというシステムに変わってくるであろう。国が何でも発想して、地方が国からもらった材料で事業展開をしていくという時代ではなくなる。もちろんそういう要素もありますが、これからは地方が自己決定していくというシステムがより高まっていくと思います。地方分権一括法は地方分権時代の幕開けという理解でいいと思います。

 もう一方で地方分権の時代として最も期待されているのが、住民の最も身近なところにある行政主体である市町村ということになりますが、今、市町村の財政がよくないのです。日本全国に3,300の市町村があります。これらの市町村の財政が、ここ10年、15年とよくない。皆さんの貯金と同じように自治体の貯金、財政調整基金といいますが、これを切り崩している市町村があります。都道府県も同じです。その一方で借金が増えているというのが現状です。本別町・足寄町・陸別町の場合、特に重要な財源であります地方交付税交付金というのは、今東京方面から地方に厚く交付する必要がないのではないかということで、地方交付税圧縮論というのが出てきています。

 ■人口減で自治体も崩壊の危機

 しかし、地方では冗談じやない。地方交付税がないと自治体の運営がスムーズにいかない。当然地方の方からは反論をどんどんしていかなければなりませんが、全体として地方交付税が削減される方向になっています。地方分権の担い手として市町村は期待をされていますが、こういうところで財政が非常に悪くなる。もう一つは、大きな問題として少子高齢化の問題です。自治体によっては、少子高齢化の問題と自然減の問題があります。自然減とは、生まれてくる子供の数より死んでいく人の方が多いということです。ある町では、10数年ずっと自然減で、集落の崩壊だけでなく自治体も崩壊してしまう。

 十勝管内の町村でも自然減という問題に直面していくことになるかもしれません。これから10年・15年先の市町村のまちづくりがどういうふうにあるべきかを私たちは真剣に考えていかなければなりません。今までは、市町村の総合計画というのは、だいたい人口が増える傾向にあると。財政の方も右肩上がりできましたので、あまり心配しなくていい。過疎の町でも人口が増えるような計画が多かったです。自治体があまり困っていませんよという総合計画が多い。しかし現実はそうもいかなくなっている。今までの総合計画ですと、なにも他の自治体と広域連合で取り組む必要はないと、あるいはそういう認識を持っていない、あるいは合併という問題についても認識の中に入っていない。だから単独自治体で頑張れるよということになっています。

 ■広大な面積の合併効果には疑問も

 しかし、これからは合併という問題も選択肢の一つに入れて、将来のまちづくりを議論していかなければならない。あるいは、いろんな問題に取り組んでいく努力もしていかなければならない。財政の問題も人口の問題も、シビアに自分たちの市町村の実態を見つめていかなければなりません。合併も連携もそう簡単にできるものでもない。シビアにまちづくりを考えると言うことは、その市町村の可能性を考えると言うことです。先ほど香川町長とお話をしましたが、香川県と足寄町の面積が同じであると。面積でいけば市に値するという話をしました。それだけ広い面積のところで合併をして行政効率が上がるかということになりますと、考えるところがあります。

 今、全国の各県が合併パターンを作っています。県による合併の取り組みもいろいろあります。しかし温度差があります。茨城県は合併に関して熱心に取り組んでいますが、隣の栃木県は茨城県ほど熱心ではない。どうしてかと言うと、茨城県と栃木県は面積も人口も同じぐらい。茨城には90いくつの市町村がありますが、栃木県は50あるかないか。県によって市町村の数がまちまちです。当然合併という問題の取り組み方も違う。考えてみますと北海道の市町村の多くは、本州で言えば奈良県が入ってしまいます。北海道の市町村の平均面積は、本州の市町村の平均面積の約10倍あります。例えば茨城県と同じようなスタンスで合併を考えるとしたら、疑問が出てくると思います。

 ■施設・イベントの協力連携も検討を

 これから考えなければいけないのは、本当に行政効率が上がるのか、これだけ大きな面積だから無理がある、あるいは面積が大きくてもやろうという考えがあるのか。もう一つは広域でこれからどれだけいろんな問題に取り組んでいけるのか。よく広域でというのは、隣の自治体、あるいは近隣の自治体といろんな仕事をするということですが、そのときに一部事務組合のような制度を作る。ここの3町の場合だとし尿・消防でやっていて、今度は廃棄物もやろうとしているようですが、そういった取り組みも一つある。介護保険で空知の奈井江町でやっている広域連合という手もある。これは国の制度として一部事務組合制度、広域連合制度があります。

 国の制度を活用して広域でやっていくという道もあります。他には国の制度を使わずに施設を共通で、各町村の総連携で使っていく。例えばAという町に温水プールがあります。B・Cの町は温水プールは造れないが、Aの町の温水プールが使える。他の施設についても同じ事が言えると思います。こういったような、施設の共同利用は、施設の効率的配置ということになりますが、そういったようなことでも協力・連携体制がとれるかどうか。

 施設だけではなく、イベントでも言えると思います。一つの町のイベントを他の町が協力して高めていくことはできないか。広域でいろいろな事をやれる可能性というのはあると思います。特に私は、3町に関していいますと、面積も広いですし合併しても行政効率は上がらないと思います。むしろ今ある町を前提にして、広域でいろんな事を試行錯誤しながらやっていくということが必要だと思います。広域でやるということは、お互いに意見を出し合って、うまく取りまとめていく作業が必要です。何でも広域でやることはないとも思います。それぞれの町で広域でやる必要はない事業もあると思います。広域でやれるものは何なのか。自治体単独でやれるものは何なのか。こういったのをそれぞれの町民の皆さん、役場の皆さんが議論されるということが大切だと思います。

 ■北欧の広域連携に学ぶ

 一つ外国の事例をお話ししたいと思います。外国でも市町村の在り方というのは実はまちまちです。よく福祉の人たちは、北欧に行きます。北欧が高齢者福祉に関して一番進んでいるのは間違いないです。北欧はどこも保険方式ではなくて税法式でやっています。北欧は、福祉の面では優れていますが、自治体の在り方に関する考え方は国によって全く違います。スウェーデンは市町村に関してどのように考えているかと言いますと、スウェーデンの市町村はものすごく規模が大きいです。上から強制合併しているんです。スウェーデンの人口が約900万人。市町村の数が280です。北海道の人口は500万強で市町村の数が212です。

 それに対してフィンランドはどうかというと、人口500万人で、市町村の数は450。人口は北海道と同じぐらいですが、市町村の数が倍以上。4千人未満の自治体が200近くあります。それでやっていけるのかと思いますが、やっていけているのです。その理由は広域連携なのです。例えば病院だと、5つぐらいの町村で病院の広域連携をしている。中心となる町に入院ベッドのある総合病院を造る。あとの4つの町村は診療所にしています。フィンランドの場合は民間の開業医はほとんどいませんから、町村がやっています。こういう方法をとると効率化が図られます。他にし尿・ゴミの問題についても小さい町で広域連携を非常に密にやっています。だから人口4千人未満の自治体でもきっちりやれます。しかし何から何まで広域連携でやっている訳ではなくて、基礎自治体としてこの問題は単独でやっています。スウェーデンとフィンランドは全く違う基礎自治体の在り方をしている。これから日本の自治体はどう歩んでいくのか。スウェーデン型あるいはフィンランド型でいくのか。

 ■自治体職員、町民による議論展開

 広域連携をやっていくということは、行政コストは下がります。それだけではなくて単独でやっていかなければなりません。そうした時にやはり財政の問題があります。これから自治体は仮に少し職員の数が減ったとしても、住民サービスを落とさない工夫が必要になります。私はそれに関してはできると思います。本庁職場の見直し、本庁職場で働いている職員の仕事の見直しをしてみる。あんがい昭和50年型の役場構造になっているのではないか。システムを変えていく。

  職員が減っても住民サービスを低下させないで、もっと能率のいい仕事ができるかもしれない。そのようなことも考えていくべきだと思います。よく機構改革といわれますが、トップの方で機構改革をするのではなくて、職員の中から仕事の見直しを図っていく。それを機構改革に結びつけていく。職員労働の見直しを働いている職員がわかっているはずです。それができれば、自治体はこれから広くいろいろできて、それに広域連携をうまく結びつけていくことができればいいと思います。シビアにまちづくりをしなければいけないのは間違いなく、その時どういう姿のまちを10年後、20年後に描いていくか。これをするのは自治体の職員の皆さんであり、町民の皆さんであり、議員の皆さんであると思います。これから皆さんで議論を展開されることを期待しています。

シンポジウム

参加住民の意見・感想

 

 

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