地域レポート

陸別、足寄、本別3町長
 「地域と地域が手をたずさえるシンポジウム」(2) 

シンポジウム

2001/11/19

 

 【自治体を取り巻く現状】

 ●横山教授

 まず、最初に現在自治体の置かれている状況は非常に厳しいものがありまして、少子高齢化・環境保全等、社会的課題を抱えています。一方では地方分権の到来を迎えている。一方では地方交付税の削減、公共事業の見直し、高速道路の凍結等が盛んに言われています。そこで3人の町長の皆さんに、それぞれ現在の自治体の取り巻く状況についてざっくばらんにお話をいただきたい。

 ●陸別・金澤町長〜交付税削減で農山漁村は守れない

 3町の中では過疎がどんどん進んでいて、先生のおっしゃっていました自然減の状況にあります。今何が一番問題かと言いますと財政の問題です。私としては、国がやっている地方交付税の段階補正の見直しには反対の姿勢であります。地方交付税制度というのは、いくら頑張ってもその町に税が生まれないところについて、地方交付税制度でもって、配分率を高くしていくのが段階補正なのですが、それを見直そうというのが今の国の方向であります。地方交付税が小規模町村ほど減らされていくと、農山漁村を守れない。特に食料基地。林業についてもきれいな水を、また災害が発生しないような保水力のある森林整備をしていかなければなりません。それをできる人の張り付け、そこに人が住んでいなければ日本の国土は守れないと思います。それを壊すことを日本の国民が許せるのかという問題になると思います。先生のお話のように少子高齢化はこれから大きな問題になると思います。仕事に対しての意欲を確保するためにも、どうしても地方交付税制度を守っていく必要があります。

 ●横山教授
 〜交付税の段階補正見直しの動き表面化

 地方交付税というのは、国税であります所得税、法人税、酒税、たばこ税、消費税。こういったものが地方交付税の財源になります。そして財政力が弱い市町村に厚く配分されるという制度です。財政力の高い自治体は配分されないという制度です。財政力の高い自治体は日本全国でどれくらいあるかと言いますと、愛知県の豊田市では、市の収入の8割は地方税でまかなっています。どうしてかというとトヨタの本社がありますよね。法人関係の税金が入ってくる。ところが財政力の弱い北海道の市町村ですと、固定資産税・住民税でも知れていますから、その分地方交付税でまかなうという形になります。陸別町で言いますと、収入の60%が地方交付税。歳入の7%ぐらいが町税収入。東京の武蔵野市だと逆になります。北海道ですと泊村だけが交付税をもらっていません。他に交付税をあまりもらわないで何とかやっているのは苫小牧市。陸別町長さんが心配されていました、人口が4千人未満の自治体について、国の方が地方交付税の金額を減らそうとしている。こうした段階補正見直しの動きが最近目立っています。

 ●足寄・香川町長〜地方への無理解が過疎の一因

 町は、第4次総合計画を平成7年に樹立しまして、平成16年度に終わるということです。そこで総合計画達成のために、年間約100億から110億の予算規模で予算執行をしております。歳入の内容は、地方交付税が50億から51億。肝心の町税が10億前後。このような状況の中で財政運用をしています。平成7年に樹立しました総合計画は、平成7年の時点では、こう極端に財政難になるとは予想もしていませんでした。毎年、ローリングをしながら財政収支のバランスを取っています。足寄町も大きな事業を行いました。運動公園、プール、体育館、化石博物館。そのため平成11年度、12年度の借金は140億程度です。しかし、50億程度預金を持っておりますから・差し引き90億の借金を抱えていることになります。今のところ、財政基金を崩さずにやっておりますが、これから先については不安要素ばかりです。

 人口については、出生者数が年間60人未満、死亡者数が90人を越えています。人口の自然減が生じています。戸籍の上では9200人ですが、これから10年先は大変な人口減になるだろうと思います。基幹産業の農業が大変冷え込んでいまして、この農業の総生産額が70億から90億の間で推移をしています。足寄町は森林面積が広大でありまして、森林の生産額はあまり上がらなく投資の一方です。過疎の原因は何だろうと考えたときに、雇用の場が無いことももちろんのこと、あまりにも都会に住む人たちは田舎のことを理解していただけない。こういったことが過疎を生んでいると思います。水や食料、空気も私たち過疎の人間が血を流して頑張って努力をした結晶が、都会に住む人たちに供給をしている。これを都市の人たちに理解をしていただかなければなりません。高速道路の問題も、ある閣僚の人は馬が横切る数の方が多いと言っていますが、北海道のことをどう考えているのか大変残念です。道民は声を大きくして怒らなければダメだろうと思います。

 足寄町は来年、町内の中学校を1校にしようと、ラワン・中足寄・芽登の3校の中学校を閉校します。このことによって経費が多少節減されるかもしれませんが、学校が減らされることによって地方交付税が莫大に削減される。先生が減り、人口が減り、経済効果も落ちる。しかしやらざるを得ないという状況です。

 ●横山教授

 大都市の人たちの無理解、誤解というのはあります。地方交付税で地方の人たちは無駄な物ばかり建てていると思っています。地方交付税は本来そういう使い方じやないんです。地方交付税があって、役場の維持、学校の維持ができるわけです。どうも最近の東京の人はそれを理解してくれません。

 ●本別・高橋町長〜財政のしくみ現状維持ならまちづくり可能

 足寄、陸別の町長さんがお話してくれたことが、3町の課題だと思います。先生のお話のとおり、都会の人と地方の人との意識の差は想像以上のものだと思います。本別で例えると、よく民間活力という言葉を聞きますが、都会だと病院一つをとってもいろいろな病院があります。地方になれば自治体でやっていかなければなりません。前世から後世まで地方自治体が担わなければならないという仕組みになってきます。それを考えると地方交付税が都会の人たちに下げられるというのは、日本の政治ではないと思います。本別町の歳入は、100億のうち町民の皆さんからの税金が9億5000万。約10%。そのほかに地方交付税が44億円。残りの50億は、いろんな事業制度で少しでも有利なものを借入しています。私はこのままの財政の仕組みでやっていけたら、すばらしいまちづくりができると思います。

 ふるさと銀河線に関しては、住民が仕事、通学、通院、旅行等で欠かすことのできない住民の足を平成元年に運行しました。赤字運行をしていますが、何とか赤字を無くそうと頑張っています。国や都会の人たちの議論では極端に言うと、足寄・陸別・本別に住まなくてもいいよと言われているようなことになると思います。地方で生きていかなければ、水や食料も中央に供給できない。その配分が地方に無いのはおかしなことで、そのことの意識、先ほど申し上げた地方と中央の意識の違いがあると思います。

 一番問題なのは先が見えないということです。今年で本別町は100年を迎えましたが、100年前は寒くてどうしようもない時もありました。何もないところで赤ちやんを育てて、木の株を一つ一つ取り除いて畑を耕して、種を植えて飢えをしのいで子供達を育ててきました。それは、これで頑張れば将来に必ず豊かな暮らしができるという気持ちでいたからだと思います。しかし今は、一生懸命やれば必ず恩が返ってくると、胸を張って言えないのが、私は残念でなりません。今の政策では地方を切り捨てていくという冷淡な構造改革。これではいくら地方で広域でと頑張っても、合併の議論をしても何もならなくなってしまいます。これから3町で未来に向かって頑張ろうと言うときに、先が見えない政治はあってはならないと思います。今まで以上に明確な方針を出していけるような政治の仕組みになってほしいと思います。

3町の人口、職員数と財政力の比較、住民1人当たり積立金・地方債残高

  人 口
(人)
職員数(人) 財政力指数 標準財政規模
(百万円)
積立金残高(千円) 地方債残高(千円)
本別町 9,870 217 0.22 5,112 229 908
足寄町 9,272 228 0.20 6,291 472 1,547
陸別町 3,319 99 0.13 3,309 1,162 1,860

 【3町の重点政策】

 ●横山教授

 3町での政策的な取り組み、それぞれの町が重点的にやってみたいことをお話していただきたいと思います。

 ●陸別・金澤町長〜「寒さ」「星」活用し定住促進

 陸別町はご存じのとおり過疎がどんどん進んでいます。十勝管内でも北のはずれの方にあり、むしろオホーツク圏に近いところに位置しています。陸別町は林業と酪農でやってきた町であり、寒さが日本一の町でもあります。先人達は大変な苦労をし、陸別町の歴史は寒さとの戦いの歴史であります。寒さを資源としていろいろやってきました。日産自動車の寒地試験もやっておりますし、これも寒さのおかげだと思っています。陸別は、夏よりも冬の宿泊者が多いです。寒さを体感するというよなことで観光資源ということでやっています。もう一つは、陸別町は星空がとても澄み切っていてオーロラも発生する町として、天文台を造りました。今全国に発信しておりまして、国の研究機関にも来てもらっています。なかなか人口が増えませんので交流人口を増やそうと考えています。交流をして、一日でも二日でも滞在してもらう。町のいいところを見てもらって、それが定住につながればと思っています。もう一つは、陸別の地を開拓した関寛斎の資料館もあります。この3つを核としてまちづくりを進めています。

 ●足寄・香川町長〜中心街活性化は必要

 足寄町は基幹産業を重点的に政策的対応をしていかなければなりません。特に家畜糞尿の対策、広域医療、林業については町ではかなりの支援策をだしております。中山間地域の交付金を受けておりますので、農業振興の面ではこのお金を地域ごとの発想の中で自由に使っていただけるように去年からスタートしています。中心市街地の再開発、駅前の241号と242号線の拡幅をする。駅前を新地にして作り直すという展開を起こしています。費用は120億程度をみております。空き店舗が多くなっているので、やる必要はないという意見もありますが、このままでは中心市街地の役割が無くなってしまうということで、この事業を展開して商店街の人たちに頑張っていただこうと思っています。本別町、陸別町は下水道の事業は進んでおりますが、足寄は半分もいっていないので、これも是非とも進めていきたいと考えています。観光の面に関しては、通過観光にならないよう、3町に足を止めていただけるよう力を合わせていきたい。

 ●本別・高橋町長〜高速道整備は不可欠

 本別町も農林業の町でありますから、特に豆の起業化を進めていきたいと思っています。おかげさまで、明治乳業と北海道糖業という基幹産業に関連した大きな企業がありますから、こことの連携をさらに強くしていきたい。また新しい事業展開に向けて力を合わせたいです。ここの町に安心して暮らしていただけるというのが原点ですから、福祉・保健・医療の3本柱である太陽の丘を中心として・本別町は日本一心のあたたかい町として全国に発信したい。ここに住んでいる人たちが明るく元気に暮らせるというのを、100年の土台の上に作り上げていきたと思っています。高速道路についても、本別町は、釧路・北見への分岐点でありますから全国への発信の努力をしていかなければいけません。

 まちづくりに関しましては、私どもの町は十勝管内でいち早く箱物の整備を進めてまいりました。箱物はダメだという人もいますが、時代とともに建物も老朽化が進んでまいりますし、まずいろんな物を造ることから始まりまして、中央小学校を含めて早く改築をしなければいけない施設もあります。そういうのを早急に第一課題として進めていきたいと思います。総合体育館、プールもたくさんの方たちに使っていただけるようなものにしたいと考えております。道路に関しては北海道の厳しい条件の中で、日勝峠を命がけで通らなければならないというのが、交通の不便さを感じていると思います。トンネル等、高速で通れるようになれば、釧路・網走圏の方たちも利用できると思います。道民の皆さんに欠かすことのできないものになると思います。

【現在の広域行政】

 ●横山教授

 現在の広域行政のメリットや課題を町長さんに語っていただきたいのですが、3町に関しては昭和40年代からし尿、消防。これにつきましては3町共同で、池北3町行政事務組合としてやられています。これから行われる廃棄物問題、介護保険の認定審査会はすでに介護保険スタートからやられています。

 ●足寄・香川町長〜ゴミ問題に広域で対処

 行政事務組合の出発点は、あまり深刻な問題でスタートしたわけではないだろうと。国の制度によって、設備・機器等を有利に活用できないか。消防ではそのようになっていました。オンネトー青年の家は全くの形式的でありまして、組合主体でなければ補助が受けられないということで形式的にやったというわけです。消防関係につきましては、いろいろな面でメリットがあります。3町共通の課題は協力し合ってやっています。その後発展を致しましてし尿問題・ゴミの問題については、どう安く住民サービスを高めながら、処理をしていくのか。こういったことで知恵を出し合って設立したのがし尿処理だったのです。足寄町に施設を建てまして、これもまた莫大な設備投資を行います。ダイオキシンの問題等もありましたし、3町で出した結論が広域での処理施設を造りましょうということになりました。来年の10月から開始されますので、今施設整備を行っております。

 施設は設計しましたが、問題はこれからなのです。どう住民の理解と協力によって、18品目の分別をやっていくか。足寄町では、なぜ他の町のゴミを足寄町に持ってくるのかという、施設建設反対意見もありました。しかし町民の代表である町議会議員の皆さんが3町の発展に結びつけるべきであろうと、議決をいただきました。皆様にお願いをしたいのですが、ゴミ・し尿は行政の責任でもって、私たちは何もしない。こういった時代ではないのでお互いの責任で、どうゴミを減量していくか、落ちているゴミを拾って分別して捨てましょうという住民になっていただきたいと思います。十勝管内の他の町村から本別・足寄・陸別は本当に協力し合っているとうらやましがられています。これから協力し合ってお互いに発展し合えればいいと思います。

 ●横山教授

 これからは共同でやるときに、どこの町にもっていくかというのが大きな課題になりまして、うまくいかなくなるということがよくあります。今から20年前に神奈川県川崎市でやったゴミの毎日収集は、その当時は非常に進んだ行政サービスでありましたが、今はそうではないと思います。毎日収集ではなくて、分別収集で場合によっては有料ということも含めて、資源のリサイクル、そういう方が環境の問題も含めて大事になっていくと思います。20年前の行政サービスが今も同じように優れているとは言えない。そのぐらい環境の問題は変化してきていると思います。

 ●本別・高橋町長

 介護保険がスタートする前に、十勝管内で一番進んでやっていたのは3町なのです。3町共同で審査会を設定して10名で担当して進めています。住民の皆さんから一番出てくる意見が、なぜこの審査結果になったのかという意見です。審査員の人材を3町から広く確保し、住民の皆さんに安心して頂けるような審査結果を出すため広域で行うことにしました。

 【施設の共同利用・連携イベントの可能性】

 ●横山教授

 現在は高橋町長がおっしゃられていたように広域行政がなされているわけですが、ここまでくるには紆余曲折があったと思います。問題はこれからですよね。これから広域で取り組んでいけるものはないのであろうか。いくつかあるとおもいますが、私からは施設の共同利用ということで、広域連携ができないであろうかという議論をしていただきたいと思います。例えば町民プールだと、本別町の住民の方は、かなり足寄町のプールを利用されているようです。体育館につきましては、各町にありますが、場合によっては他町の体育館を使ってもいいと思います。その場合、プールだと利用料金に違いが生じてきます。地元の住民の方は無料で他町の方は有料。体育館も地元の方が優先で、空いていれば他町の方も使える。施設の共同利用ができないのであろうかというお話をしていただきたいと思います。

 ● 陸別・金澤町長〜距離のネック高速道が解決

 3町でいろいろ広域を進めていますが、私自身もっと広めていかなければいけないと思います。施設については、それぞれの町で施設の老朽化等を含めてどのようになっているのか、建て替えということになれば、広域でやれば効率的な行政につながると思っています。しかし陸別町から足寄町まで35km。距離がネックになる場合もあります。医療についても救急の場合、100km以上あるので帯広の厚生病院に運べないので北見の医療機関に救急車が走っています。高橋町長からありましたように高速道路を使えると便利になります。本州の方たちはどうしても夏の北海道しか見てもらえませんが、北海道の寒地の厳しさ、路面凍結等を考えると高速道路が必要になります。高速道路ができることによって広域連携が十分にできると思っています。

 ●横山教授

 足寄町の施設については総合体育館、温水プールとかなり充実していますが、本別町の町民も足寄町の施設を使っているようでありますし、足寄町として体育館・プール・スケートリンクについての広域利用をどのようにお考えになってますか?

 ●足寄・香川町長〜プールの共同利用は難しい

 これからは広域というのは、行政の推進の中に入れて行政を進めていかなければならない時代になっていると思います。施設の共同利用は、住民は少しでも施設が近いところにあればいい。これは住民の要求だと思います。コストの削減、施設の有効利用をするために、どのように住民が協力をしてくれるのだろうか。金澤町長がおっしやられてたように、距離の問題。これをどうクリアするかが問題です。施設を利用するに当たり、そこまでの移動方法等の問題があります。温水プールは特に女性や高齢者の方の利用が多いです。3町を一つのプールでということになれば受け入れは難しいと思います。今でも大変な状況になっています。その他のものにつきましては、お互いに協力しあいながら使って行ければいいと思います。

 ●横山教授

 施設の共同利用というのは言葉で言っても、それぞれの地域色がありますので、実現するのは難しいと思います。足寄町は学校の授業で温水プールを使っていたり、高齢者の水泳教室を開いたりしています。共同利用が100%いいとは限りません。それぞれの自治体の実状を討論しあいながら煮詰めていく形になると思います。

 ●本別・高橋町長〜医療・ケアハウスを連携で

 施設の共同利用につきましては、近隣町村との施設状況をみながら進めていく形になると思いますが、お互いの町の施設をきちんと認識しながら利用できれば一番いいと思います。医療についてもそうですが、ケアハウスもお互いに協力しあいながら進めていきたいと考えています。

 ●横山教授

 この問題はかなり難しいと思います。行政の思い、町民の方たちの思いがありますよね。例に出せば温水プールであれば、温水プールのある町の町民の方は無料で、他町の方は有料。今度は全部無料にしますということになると、そこの町の町民から意見が出てくる。施設の共同利用というのは、簡単なようであってなかなかできない。財政的に余裕があればそれぞれの町に造るということになってしまいます。温水プールに関しては3つの町で一つではなく、もう一つ増やす。陸別町に関しては足寄町まで35kmありますから、温水プールに行くだけでも大変ですよね。

 もう一つはイベントの問題です。陸別町で2月にしばれフェスティバル、足寄町は5月に足寄ふるさとの花まつり、8月には花火大会と盆踊り大会。本別町は8月にとうもろこし3万坪迷路、9月にはきらめきフェスティバル。今までは各町村が主体となって、かなりの人を集めている。例えば陸別町のしばれフエスティバルを足寄・本別が応援するという形。そのようなことをどのように考えていらっしやるかお聞きいたします。

 ●陸別・金澤町長〜イベント支える人材が不足

 陸別町は人口が少ないものですから、イベントを支える人が足りないです。近隣の町村同士が支え合う時期にきていると思います。イベントを支える人たちがいなくなると中止せざるを得なくなってしまいます。

 ●横山教授

 これは大変切実な問題です。人口が減っていく中でお祭りの担い手がいなくなる。これも陸別町のお祭りを他の町が支援していければいいですよね。

 ●足寄・香川町長〜持ち回りイベントはどうか

 足寄町のイベントのほとんどは、実行委員会を設けて町民が主体となって進めています。今若い人が少なくなっているということで、大きなイベントをやっても疲れてしまう。財政支援の大半は町の補助金ということで行っていますが、イベントにいらっしゃる方のほとんどは町外の方たちです。そうなると、各町だけでやるのではなく、持ち回りでイベントができないものかと考えます。

 ●横山教授

 足寄で花火大会をやったら、連携する形で連日で本別町で花火大会を開催したら、観光客も両方見られることになりますよね。

 ●本別・高橋町長〜ツアー誘致では連携に実績

 今まで協議会で話し合ってはきましたが、札幌圏からツアーを組んで3町で連携して各町へのイベントヘの協力はしてきました。直接お手伝いをするということになりますと、時期的な問題、行く人の問題があると思います。各町のイベント実行委員会の方たちもかなり厳しい状況の中で取り組んでいると思います。本当は連携してやっていければ少しは楽になるとも思いますが、余裕ができないということもあります。自分の町のイベントと、他の町のイベントを同じ位置づけで考えるというのは、浸透させていかなければなりません。

 【町村合併をどう考えるか】

 ●横山教授

 考えていくということが重要でありますから、これから試行錯誤しながら、いい広域連携ができればと思います。次に各町長さんに町村合併についてどのように考えているのかお聞かせ願います。

 ●陸別・金澤町長〜過疎の町の合併メリット疑問

 私は合併を一つの選択肢と考えています。合併をする前にまだやることがあるのではないか。広域連携・広域行政としてできることがあるのではないかと考えています。帯広市に合併した川西・大正。それに対して旭川市に合併しなかった鷹栖。過疎の町が簡単に合併して、果たしてメリットがあるのであろうか。3町が合併したら神奈川県と同じ面積になり距離は縮めがたい。どうせ合併をするなら十勝を一つにという道もあると思います。

 ●足寄・香川町長〜住民に情報提供し慎重に検討

 足寄町は今、役場庁舎内に合併検討委員会を設けまして、何回か議論をしています。合併がメリットになるのかデメリットになるのか、慎重に考えなければなりません。正しい認識を持っていただけるように住民に対して情報を提供していこうと考えています。これから行財政がどう変わっていくのか、確保できるのかが問題になると思います。

 ●本別・高橋町長〜歴史、住民性に配慮必要

 町民の皆さんがいかにゆとりを持った幸せな町に住んでいただけるかというのが一番でありますから、そのための合併の論議でなければいけないと思います。そのためには正しい情報を町民の皆さんに供給していき、検討する必要があります。合併は町村の考えだけでやるべきではないと考えています。こういう提案をするには、もう少し地域の実状を考えていただいて、一番大事な生活圏の見直しをすることが必要です。上浦幌は本別町に近いですよね。役場の手続きは浦幌町で行いますが、病院・高校生活等は本別に来ています。今よりもっと便利にゆとりを持って生活できるような体制を将来つくってくというのが大事だと思います。目先の財政の厳しさだけで合併をするのはどうかと思います。広域連携についても3町だけではなく、課題の必要性に応じて政策課題を解決すべきと思います。まず、合併をする前に整備をしなければなりませんし、克服課題もあります。各町の歴史・まちづくり、住民性を考えていかないと大変な結果になると思うので、慎重に考えるべきと思います。

 【参加住民との質疑応答】

 ●横山教授

 ここで会場から2名の方に絞って質問を受け付けたいと思います。

 ●質問者〜合併論後ろ向きでは?分散型の広域連携はどうか?

 2点について質問させていただきます。町村合併のお話がありまして、先ほど横山先生の方からまちづくりの選択肢として合併というお話がありました。少し前までは地方分権推進ということで、それぞれの自治体が理事者・議会・住民が一体となって政策を、地域の特徴を生かしながら、自治体を運営しなければいけないと言われていましたが、その一方で合併という問題。合併をする理由というのは、国や地方の財政が厳しいとか、少子高齢化等の負のイメージというのが非常に強くて、果たして合併によって自分たちの町がこれから良くなっていくのかという懸念があります。まちづくりというときにどのように受け止めていけばいいのかという思いがあります。

 もう一点は広域連携の話ですが、町長のお話だと3町に限らないということでしたが、3町で広域連携を考えたときに、どうしても一極集中になりがちになると思います。地理的にいいますと真ん中にある足寄町に集中すると思います。そうなると地域バランスが崩れると思います。例えば、この広域連携は本別町で、この広域連携は陸別町でという分散型の広域連携はできないのかなと考えます。介護保険の認定審査会については、3町持ち回りになっていて、すべてがそういう形になるとは限りませんが、3町が公平に広域連携を進めるのは可能かどうかお聞きします。

 ●横山教授〜特例債目当ては危険、合併には理念必要

 最初の問題、まちづくりに関しては20年前とは違い、総合計画では人口は増える、財政も右肩上がりでというような形でした。現在はそのようにはいきません。シビアに自分たちの町をみて、将来の展望を打ち出していかなければならない。そうしたときに道はいろいろあると思います。単独自治体でこれからも頑張り、財政が厳しいので職員を少し減らしても住民サービスをどう維持していくか工夫していきましょう、機構改革、職員の仕事の中身を少し変えていきましょう等の努力が必要になってきます。広域でやれるものはやっていきましょうという方法もあります。私は単独で、広域連携を強めていくという道が合っていると思います。小さい町が5つ6つ集まっても、財政力は高まらないと思います。行政効率も面積が広いので上がらないと思います。本州でしたら行政効率は上がると思います。

 もう一つは、永い目で見ますとこれからの時代は、福祉・教育等のソフトな領域にシフトしていく自治体行政になると思います。今、合併した場合には合併特例債という有利な借金があります。また建設事業のオンパレードとなりまして、合併がある程度軌道に乗ったところに借金がきてしまう。財政支出構造は福祉・教育のソフトな領域にシフトせざるを得ない状況になっています。本当に理念を持って合併すればいいのですが、合併特例債だけを目的としてしまうといけないのではないかと思います。

 広域連携に関しては、おっしゃるとおり何でも足寄町中心になってしまいますよね。足寄町が中心になってやったほうがいい広域連携もあるでしょうし、施設に関してもスポーツ施設だけではないので、文化施設は本別町や陸別町にということも可能です。分散型の広域連携は必要になってくると思います。

 ●質問者〜合併前面に出過ぎでは?

 国が進めようとしているものは、広域連携や広域行政を通り越して合併ということだと思います。合併というのが前面に出てきているように感じていますが、どうでしょうか?

 ●横山教授〜広域連合進まなかったのも背景

 一つは大きくは進んでいないという状況です。合併特例債の期限が平成17年と迫ってきている訳ですが、以前に比べれば進む速度は速くなっているとは思います。現実に地方交付税の動きをみていますと、段階補正は大変な問題ですが、交付税だけだと具体的にものすごく削減という話にはなっていません。政治的な動きも絡んでいますので、よくみえないという状況です。これから合併の議論が進む前から、総務省は一部事務組合制度というのは住民に理解されていないので、95年に広域連合の制度をつくりました。しかし市町村はあまりやらなかったので、合併という動きになってきました。いろいろなシンポジウムで論議されていても実際進んでいないことも事実です。合併特例債は平成17年3月が期限切れということなので、その2年前ぐらいからやらなければいけません。現実には1年半ぐらいしかないのですが、町による温度差もあるということが現状です。

(註:発言を一部要約しています。見出しは編集室が付けました)

基調講演

参加住民の意見・感想

 

 

| TOP | BACK | NEXT |