続・市町村合併を考える1-2

住民意識調査の活用法(2)

2001/07/25

 

 YES・NOだけでなく課題抽出を

 岡山県赤坂町は2000年11月、全有権者4278人を対象に合併問題についてのアンケート調査を行いました。79.4%という高い有効回答率でした。合併は「必要」が11.1%、「検討の必要はある」が34.6%で、「必要ない」(28.3%)、「分からない」(26.0%)を大きく上回りました。

 ■「期待」「不安」の内容解明

  県の推進要綱では近隣4町との合併パターンが示されていますが、特に合併の話が具体化した中での調査ではありませんでした。しかし、回答率に表れた住民の関心の高さに基づき、町は議会と一体となった合併の検討作業に入ることにしました。

小豆郡3町の合併推進の理由
議員・職員の削減、経費節減のため 19.5
行政効率の向上・行革推進のため 17.3
国や県の支援があるうちに合併すべき 17.1
地域イメージの向上、一体感の醸成のため 11.8
新たな行政ニーズに対応するため 10.3
岡山県赤坂町の合併に対する期待
福祉、医療、教育などのサービス充実 16.1
議員や職員の削減、経費節減 14.4
税金、公共料金の負担減少 14.0
 スポーツ、文化施設の利用範囲が広がる 13.5
道路や公共施設の一体的な整備 13.2
小豆郡3町の合併に対する不安
中心部と周辺部の格差が拡大する 20.5
行き届いたサービスが受けられない 16.2
役場が遠くなったり不便になる 13.5
旧3町間で対立が生じる 10.3
交付金の減少などにより経済が苦しくなる 9.9
岡山県赤坂町の合併に対する不安
役場が遠くなり不便になる 23.7
きめ細かいサービスが受けられなくなる 22.0
サービス低下、税負担が重くなる 19.1
周辺部の過疎化が進行する 12.8
歴史や文化など地域の個性が失われる 10.0

 ここでは、アンケート調査の結果が、検討課題のあぶり出しに活用されています。上の一覧表は香川県小豆郡3町(左)と赤坂町(右)のそれぞれの調査で住民が挙げた「期待と不安」の上位5項目です。いずれの項目もほぼ共通した内容となっていますが、赤坂町では、小豆郡に比べてまだ漠然とした感のある「不安と期待」の具体的な中味を明らかにしながら、合併の方向を探ることにしています。

  同じ意識調査でも、赤坂町は「課題抽出型」、小豆郡は「問題解決型」の調査といえます。

 ■「温度差」を読み取る

  住民意識調査で注意が必要なのは、大きな住民意思の流れと同時に、その中に生じている「小さな瀬や淵」にも目を向けることです。たとえば小豆郡3町の調査では、「3町間の対立」の懸念について池田町は7.7%なのに対し土庄町は12.7%と「温度差」が生じています。静岡県の清水市議会のある会派が行った調査では、60歳以上の男性の77%が静岡市との合併に「賛成」なのに対し、20代の女性では33%の賛成しかありませんでした。

  小さな数字の差異に潜んでいる問題や課題を丹念に読み取ることも、合併問題についての合意を形成する上では、非常に重要なことです。合併論議の結論を急ぐ余り、「イエス・ノー」の結果だけに目を奪われることは避けなければなりません。

 

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