続・市町村合併を考える3-2

駆け足合併〜大船渡市と三陸町の場合(2)

2001/09/03


 問われる論議の熟度と住民参加

 岩手県南部の大船渡市の人口は約3万7千人、北に隣接する三陸町は約8600人。合併が実現すると、久慈市を抜き、宮古、釜石に次ぎ沿岸地方第3の都市となります。 沿岸南部の中核的な国際港湾都市を目指す大船渡市は、その第一歩と位置付けて合併推進の方針を掲げました。北里大学水産学部など学術研究機関が立地する三陸町との合併は、メリットが大きいと考えられます。

 ■住民投票条例の制定案は否決

 大船渡市に比べ合併の機運が熟していなかった三陸町では、議会と住民の間で論議が沸騰しました。特に、ことし11月17日の町長の任期満了を前に合併に漕ぎ着けようとする動きには慎重な姿勢を示し、今任期中の合併の可否について住民投票を求める議案提案が行われました。また、町内の住民団体は、合併そのものの可否を問う住民投票条例の制定を直接請求しました。結果はいずれも否決され、「合併は議会制民主主義に従い、町議会が決定すべき問題だ」とする町長の付帯意見が追認された形となりました。

 住民に対する説明としては、7月に集中的に懇談会が開催されました。両市町合わせて12会場で住民約500人が参加しました。大船渡側では早期合併を求める意見が多かったのに対し、三陸町側では地区によって賛否両論が飛び交い、慎重・反対意見も目立ちました。

 合併協議会の議論を公開するなど情報開示の工夫は行われていますが、ごく短期間の論議で住民の意向が十分汲み入れることができるのか、編入合併であるがために特に「編入される側」への説明と参加の機会が確保されているか、きちんとした検証と、今後の課題を整理することが必要でしょう。

【大船渡・三陸の合併をめぐる動き】

●99年9月 三陸町の佐々木菊夫町長が議会で、大船渡市との合併を視野に入れた検討委設置の方針表明
●2000年8月 大船渡市 部課長級職員で検討委設置
●11月14日 大船渡市の甘竹勝郎市長が三陸町との合併推進の方針表明、広域行政推進係を新設
●2001年3月 大船渡市が住民説明会
●5月 両市町の職員による合同検討会設置
●5月15日 三陸町議会 議員提案の住民投票条例案を賛成8反対11で否決
●6月5日 市議会の調査特別委 20対3で合併推進
●6月6日 任意による合併推進協議会が発足、三陸町内の住民団体が合併の可否を問う住民投票条例の制定を求める直接請求書を提出
●6月12日 三陸町議会 直接請求による住民投票条例案を賛成6反対13(白票2)で否決
●6月19日 大船渡市議会で調査特別委が合併推進の報告書提出
●7月5日 両議会 三陸町の大船渡市への編入合併、建設計画案を承認
●7月16日 法定合併協設置
●8月8日 11月15日合併の方針公表
●8月31日 合併協定に調印
●9月 定例議会で最終審議予定
●11月15日 合併施行予定
 

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