続々・市町村合併を考える1-1

住民投票条例の可能性(1)
埼玉県・上尾市の場合

2002/01/28

 

 重大な選択、住民意思を問う

 埼玉県浦和・大宮・与野の3市は2001年5月1日に合併し「さいたま市」として新たなスタートを切りました。合併協議の過程では、隣接する上尾市と伊奈町を加えた4市1町による合併の可能性が論点の一つとなりました。県南中央部の5市町による中核都市圏の形成は、80年代から論議されてきたからです。

 ■「さいたま市」先行、市長はNO

 浦和など3市による合併推進協議会(2000年4月に法定協設置)が先行する中、上尾市長は「さいたま市」合併に参加しない考えを表明しました。その理由について市長は、2001年2月の合併推進派を中心とした住民請求に基づく「さいたま市と合併することの可否を住民投票に付するための条例案」に対する意見書で次のように述べています。

  1. さいたま市との間では合併に関し何らの協議が行われておらず、3市合意に基づく新市の方針が強いられることになる
  2. 市民感情には、歴史的背景を踏まえ、浦和、与野市よりも桶川市や伊奈町に親近感を抱くとの意見も多くある
  3. 合併の可否につき最終的な選択の結果を表明する段階には至っていないし、合併協議を行う前に合併の可否について住民投票を実施した事例はない

 ■投票率64%、判断材料の提供に課題

 臨時市議会は同年5月、原案の投票期限を延長するなど一部修正した上で賛成24反対7の採決で条例案を可決しました。投票結果は、投票率64.48%で賛成41.7%、反対58.3%となり、市民は「合併反対」を意思表示しました。

 合併の是非をテーマとするものとしては全国初となった上尾市の住民投票は、参議院選挙と同日投票となったこともありますが、64%という過去の市長選などと比べてもかなり高い投票率となり、合併問題に対する住民の関心が高いことをうかがわせました。市長の意見にもあるように、地理的条件からみるとさいたま市との関係では「吸収される周辺部」的な色合いが強く、一方で他市町村との組み合わせによってはより自主的なまちづくりの可能性も開ける。住民にとっては仕事や暮らしに関わる非常に大きな選択肢とも言えます。

 議会が住民投票の道を選んだのも、地域と住民の将来を大きく左右する問題であるとの認識に根差したもので、住民の「直接的な意思」を重視しようとする考えに基づいたものです。ただし、重要なテーマにどう対処するか判断するための情報や材料の提供が十分であったかというと、情報の量・質の両面で課題も残されました。

 

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