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<1>知事に合併推進の「強権」今後の地方自治のあり方について検討していた地方制度調査会は、合併特例法が期限切れとなる2005年4月以降も、合併新法を制定して市町村合併を推進することを内容とした最終答申をまとめました。 焦点となった基礎自治体に関しては、「住民に最も身近な総合的な行政主体」と位置付け、「規模・能力の充実」と協働・連携による「住民自治の重視」を今後の課題の柱としています。その上で、規模・能力の拡充策として「市町村合併の推進」を揚げ、住民自治の推進策として「地域自治組織の制度化」を掲げています。 ■協議会設置・住民投票の勧告も合併推進の具体策としては、合併特例債といった財政支援措置を廃止する一方で、都道府県による積極的な介入を認めようとしている点が大きな特徴です。現在の合併特例法では「旗振り・後押し役」にとどまるのを、「仲立ち人・牽引役」に押し立てようという考え方です。 ここで、合併推進の重点対象となるのが、3類型(下の表のa、b、c)で、特に、小規模町村については、「概ね人口1万人未満」がいわばターゲット。人口1万人未満の自治体は約1500あるから、単純計算では市町村の数は現在の半分近くにまで減少することになります。
合併構想に基づく都道府県知事の権限は、関係市町村間の合意形成に向けた斡旋にとどまらず、合併協議会の設置勧告も認める方向です。市町村議会や市町村長が従わない場合には、設置案の議会付議か住民投票を行う制度の創設の検討も提起しています。現行制度に対比すると、有権者の6分の1の署名に相当する権限を知事に与えるといっても良いでしょう。 <2>小規模自治体〜合併困難なら「2級町村」型人口1万人未満であったり、合併が困難な自治体、あるいは小規模でも単独自立を目指す市町村には、どんな選択肢があるのでしょうか。調査会の答申をベースに将来の「自治のかたち」をイメージしてみたのが下の図です。 ■県、近隣自治体、広域連合が補完答申では「概ね人口1万人未満(地理的条件などは別に考慮)」の自治体は、十分な権限と財政基盤・高度な職員集団を有する「自律性の高い行政主体」とは原則的に認められないため、事実上、単独自立の道は閉ざされることになります。知事の調整によっても合併が困難な場合は、新制度の元で拡充された広域連合の傘下に入るか、「特例的団体」として窓口サービスなどごく限られた自治事務を処理する「2級町村」型の変則的な存続となりそうです。 小規模自治体が自らでまかなうことのできない住民サービスや自治事務は、都道府県や近隣の基礎自治体、広域連合などが肩代わりする「垂直・水平補完」に頼る形になります。したがって、小規模自治体の組織も、必要最小限に簡素化されることになります。 ■合併後期限付きの「激変緩和」も一方、合併の道を選ぶ場合には、合併後の一定期間に限って、旧来の市町村の単位をそのまま残す「特別地方公共団体」という選択があります。地域自治組織の特例として答申が提起しているもので、合併前の名称を残すことも可能。合併協議の段階で知事が市町村単位の地域自治組織の設置勧告をできるとしている点からも、小規模自治体にとっては「激変緩和」的な措置であり、小規模自治体の参加を敬遠しがちな周辺自治体に対する「融和促進」の狙いがあると推測できます。
<3>地域の自主性・自治の多様性は?地方制度調査会の答申では、「地域自治組織」を新たに一般制度として整備する狙いとして「住民に身近なところで、住民に身近な事務を住民の意向を踏まえつつ効果的に処理する」ことと、「行政と住民の連携により地域の潜在力を発揮する」ことを挙げています。 したがって、自治組織の単位は「基礎自治体内の一定の区域」とし、その組織のあり方や運営などについては、「地域の自主性を尊重する」との視点から法律の規定も最小限にとどめる考えを示しています。 ■権限・機能制約された地域自治組織しかし、自治組織の長だけでなく、地域協議会のメンバーも基礎自治体である市町村長が選任。協議会は、市町村長や自治組織の長らに意見具申・建議する諮問機関的な存在にとどまっています。法人格や課税権もありません。 確かに地域協議会が「協働の核」として発展していく可能性はありますが、組織としての基本的な権限や機能からみると、「出張所+住民懇話会」的な色合いが強く感じられます。 地域自治組織の特例的な扱いとして答申が提起した合併の際の特別地方公共団体の場合でも、組織の長は基礎自治体である市町村長の選任としています。地域協議会のメンバー選出や事務事業の範囲などは自主性に任されているので、英国のパリッシュ的な役割を果たすことも可能なようですが、合併後の一定期間のみという制約があるだけに、やはり変則的な住民自治といえそうです。(比較表を参照) 以上、小規模自治体と合併、地域自治組織のあり方などに関わる答申の内容を見ると、「地域の自主性」や自主性を尊重することによる「自治の多様性」を認める視点・姿勢がなお弱いように感じられます。特に、小規模自治体にとっては、将来の選択肢が実施的に狭められており、そうした選択肢を広げる可能性を持つ「協働型の住民自治」に関する検討が希薄だったようにも思えます。
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