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<1>大都市〜権限移譲進め、指定要件緩和「今後の地方自治制度のあり方」に関する答申の中で第27次地方制度調査会は、人口集中や市町村合併によって規模拡大が進む大都市については、一層の事務権限の移譲をはじめとした機能強化を進めることを基本に掲げました。特に、都市計画を推進する際の都道府県と基礎自治体との役割分担や農地転用制度の見直し、義務教育、産業振興に関する分野の権限移譲を優先的課題として挙げています。 このため、現行の制度では「受け身」の側にある基礎自治体が、自らの判断で積極的に事務権限の移譲を都道府県に求めていくことができるような仕組みの創設を提言しています。 札幌、仙台、さいたま、千葉、福岡など13ある政令指定都市については、日常的な行政サービスの窓口となっている行政区をより住民に身近な者にするため、地域内分権の推進や新たに提起した地域自治組織の活用が課題とされています。また、ごみ処理、公害、交通対策など大都市の生活圏域全体で取り組むべき課題に関しては、指定都市と周辺市町村との連携強化を求めています。 ■注目される特例市・中核市移行人口20万人以上の特例市(2003年4月1日現在39市)、30万人以上の中核市(同35市)についても、それぞれの都市の規模・能力に応じた事務権限の移譲推進を基本に据えています。また、市町村合併の進展に伴って規模・能力が変動していくことが考えられるため、特例法期限切れの2005年3月までは現行の指定要件を維持し、その後は要件緩和を図るべきだとしています。 市町村合併の推進に伴って新設された特例市制度では、4月1日現在で青森、福島、那覇など17市が対象要件を満たしており、地方の中堅都市の中には合併により特例市移行を目指す動きが目に付きます。指定要件の緩和方針がどう具体的に制度化されるか不透明ですが、今後の合併協議にも少なからぬ影響が予想されます。
<2>府県合併から道州制へ2段階で第27次地方制度調査会の答申では、今後の広域自治体としての都道府県について、次の3点を基本に据えています。
その上で、基礎自治体との役割分担の下で広域自治体としての役割・機能を十分に発揮するためには、都道府県の区域拡大が必要だとして、道州制導入の検討の必要性を挙げています。 青森・岩手・秋田県の北東北3県合体構想などに代表される都道府県合併については、合併を求める関係都道府県の発意によっても合併手続に入れるような、市町村合併の場合と同様な制度の導入を検討すべきとしています。 ■連邦制は排除、長・議員は公選都道府県合併に対して道州制の導入については、地方自治制度の大きな変革となることから、国民意識の動向などをみながら、次期の地方制度調査会において議論すべきだと、慎重な姿勢を示しました。同時に、道州制の基本的なフレームや役割・権限については、論点を整理しています。 論点整理の中で、まず道州制の基本的な考え方としては、広域自治体と基礎自治体との2層制を前提としていることが大きな特徴です。これは現行の憲法の枠組みの中での制度改正を目指すもので、行政権だけでなく立法権をも国と州で分割する「連邦制」を制度改革の選択肢から排除しています。 道州制の基本フレームされているのは、次の4点。
<3>産業・雇用・環境など圏域の視野で地方制度調査会は、道州制の導入によって国から道州への権限移譲を進め、基礎自治体を含めた3者による役割分担を明確にする方向を打ち出しています。 まず、国については、外交・防衛など国際社会における国家としての存立に関わる事務と、年金・医療などの全国統一で定めることが望ましい行政分野に関する事務の二つに重点化します。現在、全国的な規模や視点で国が進めている施策・事業については、できるだけその多くを道州に権限移譲する考えです。 ■地方税大幅に拡充し自律性支える一方、道州は、国から地方に移譲される権限のうち基礎自治体に移譲できるものは原則として移譲します。その上で、基礎自治体と役割分担しながら、圏域全体の視野に立った産業振興・雇用・国土保全・広域防災・環境保全や広域ネットワークなどの分野を担当することとしています。また、国の地方支分部局が現在持っている権限も原則道州に移管するが、従来の機関委任事務制度の手法は取らないこととしています。 道州制導入に伴う地方税財政制度については、道州の権限に応じて自律性を高めることを原則としています。さらに、自律性の高い道州制を実現するため、自主財源である地方税を大幅に拡充することを基本に、規模・権限・経済力などを踏まえた新たな税財政制度の仕組みづくりが必要なことにも言及しています。 道州の区域設定に関しては、国の法律によって全国をいくつかにブロック化する方式と、関係都道府県が各議会の議決を経て申請するなど都道府県のイニシアチブを重視する方式の二つを挙げています。また、全国一斉による移行方式と、要件に合致したところから順次移行する方式を挙げていますが、いずれも今後の検討課題とされています。 ■地方から改革案・推進策の発信をこのほか、▽広大な区域と権限を有することになる道州が、長と議会議員を住民が直接公選する二元代表制で良いか▽道州の議決機関・執行機関・補助機関のあり方▽三大都市圏と人口・経済集積の異なる他の圏域とを同列で扱うか▽大都市と道州との関係▽小規模町村に対する補完機能〜などさまざまな具体的検討課題が挙げられています。 一方では、道州制の検討以前に既存の制度である都道府県間の広域連合の活用について考えるべきだ、との意見もあり、全体としては慎重な検討が求められています。 以上、大都市・広域自治体のあり方に関する答申を見ると、地方自治制度だけでなく国の枠組みにも関わる大改革となるため、全体として慎重な姿勢が目立ち、検討課題の整理にとどまっています。これらは税財政制度とも関わるためでもありますが、地方自治の制度設計に関わるテーマである以上、これまで以上に市町村、都道府県の側から改革案なり推進方策を提起していくことが望まれます。
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