続・市町村合併の論点2〜北海道にて(2)
高校生フォーラムの討論から

2002/12/09
(オンラインプレス「NEXT212」104号掲載)

 

 市町村合併を考える高校生フォーラムが去る11月19日、北海道帯広市で開かれました。参加したのは地元・柏葉高校の新聞局のメンバー5人。校内新聞の特集記事で合併問題を精力的に取材する彼ら・彼女らの目に、市町村の姿はどう映っているのか。
 (註:本稿は11月26日付十勝毎日新聞掲載記事のダイジェストです。司会は地域メディア研究所・梶田代表)

 ●司会 合併問題で全校アンケートを実施したそうですね。その結果は?

 ●三澤亜美さん 合併に興味があるとの回答は、帯広市内の生徒が32%、市外は45.7%と、やはり町村の人が興味あるという結果が出ました。望む合併の型では、市内の人は感覚的に大きいまちになりたいなとの気持ちからか、特例市移行型がいいという回答が多くなっています。

 ●小田中大君 大人の段階できちんと論議していないのが、高校生にも反映されているのでは。自分の住んでいる帯広市は合併しても中心地として変わりはないが、中札内村などは合併したら「帯広市」という名前になってしまうかも知れない。住民にとっての課題の違いが関心の違いに表れているのではないでしょうか。

 ●荒井牧さん やはり小さい町村はだんだん過疎化し力がなくなってきて、強いところに頼らなければいけない部分があると思う。一方で、自分たちが住んでき町が変わってしまうことに反発もあります。大きいところに吸収されれば対等でないのでサービスも不十分で、不満な面も出てくる。

  故郷消えるようで寂しい  もっと考える材料が必要 

 ●三澤さん 合併で育ったマチの名前がなくなるのは寂しい。マチの歴史、特色がすべてなくなってしまい故郷がなくなるような気がします。

 ●柏木悠希君 合併自体は単純なことだと思う。しかし、交付税の問題とかは一般の高校生や行政に携わっていない人、興味ない人には、合併で何が変わるのかとか、難しいものと考えられてしまう気がします。まず知識がなければ判断できないので知識を持つべきだと思います。

 ●小田中君 市役所が出前講座をやっても合併論議自体が本格化していないから、危機感や緊張感がない。今後じゃあどうなっていくのだろうという視点がないと思います。

 ●三澤さん このまま合併しないでいくと、マチは過疎になるだろうなという印象です。例えば私が小学校のころは1学年3クラスだったのですが、今、妹の代では1クラス。地元の高校は定員割れを起こしており、合併問題なしでも、なくなってしまうのだろうなと感じています。

   特例市なら大学整備進む 連携による産業起こしを 

 ●柏木君 合併して特例市に移行すると大学を整備するのに有利になるという話も聞きました。大学があって成り立つ産業とか、職場とかがあるので、町村の合併を考えている人たちには、そういった情報を皆に知らせ、考えていくことが必要と感じます。

 ●三澤さん 田舎はのんびりして空気がいいし、都会に住んでいた人ほど、田舎で暮らしたいという人がいるので、老人施設を田舎にもって来た方がいいのでは。

 ●小田中君 老人を増やしても生産人口でないので、介護保険の費用を自治体が払うだけで負担になるし、医療施設も置かなければならないということもある。老人施設を置いたとしても、それと連携できる産業なりを考えなければならないと思います。

 ●三澤さん そういった施設をつくることで雇用がある。介護保険ももっと広域で考えてもいいのではないでしょうか。

 ●司会 都市ばかりがいいのではなく、田舎にもすごくいいところ、魅力・パワーがあって、そういったものを連携させることも地域を活性化させるカギですね。それでは、合併を考えたとき帯広市の存在は周辺町村にとってプラスなのかマイナスなのか。

 ●畠山裕世さん 私の住む芽室町も、帯広と一緒になれば、何だか発展しそうだなあと最初は感じました。人口が増えて、芽室の方まで伸びるのであれば、人口が同規模の町が集まるよりは、吸収されてしまった方が良いのかなと。けれども、芽室町の中でさえ除雪があまり来ない地区があるのに、帯広と一緒になったら、どうなるんだろうとの不安もあります。

   権限・財源を移譲すれば真剣なまちづくり論議に 

 ●小田中君 北海道は特殊ですよね。1市町村の面積が大きいから、他の都府県と比べても行政機関を置く場所でずいぶんもめるのではないでしょうか。

 ●司会 ちょっと気になるのは吸収とか、対等という言葉。マチの格は人口だけの問題なのでしょうか。面積の広さも、工夫次第。

 ●小田中君 支所などを置き、そこにある程度の権限を移譲する形が必要。しかし、それでは国の望むコスト面の削減には結び付かず、財政は圧迫されるという問題も生じる。地方交付税頼りの行政運営ではなく、権限も財源も国から委譲され「すべて自前で賄ってください」というのであれば、限られた財源の中で真剣なまちづくり論議になると思います。

 ●柏木君 広さの問題は本州では考えられない。国がなぜ全国一律の考えで進めているのかという疑問があります。財政措置を含んだ国のやりかたは、圧力。

 ●司会 行財政効率化と地方分権の推進を突き詰めていくと、十勝全体を1つのマチにという考え方もできる。帯広市に都市機能をもっと集中させ、町村部に、ある程度の権限と財源を与える「近隣政府」を設置する仕組みであれば成り立つかなと思いますが、どうですか。

   地域特性生かした発展を ある程度妥協も必要では 

 ●畠山さん 十勝全体で1つというのは、広すぎて、すべてを見切れなさそう。1つでは賄い切れないという感じがします。

 ●三澤さん 大き過ぎると逆に効率化は難しい。中程度の規模の方が良いと思います。

 ●小田中君 「十勝市」は、農林水産業も工業も教育もあって、何でもありの状態。ブロックごとに特色を持った発展ができるようになればおもしろいとは思います。

 ●柏木君 メリットもあるので、そうした発想は賛成だけれども、そのために交通機関や周辺地区の行政サービスがきちんと確立されることが必要。そんなマチになれば住みたくなるのでは。

 ●司会 これからのマチをどうするかというのが合併論議。皆さんのようなこれからのマチを支える世代もきちんと考え、発言できる場が必要ですが合併についての率直な思いを。

 ●荒井さん 合併にはある程度の妥協は必要。名前の変更などつらい部分もあると思うけれど、どの市町村も納得した合併はきっとあり得ない。学校の席替えと同じで、ある程度たつと慣れてしまう。今から難しい論議をたくさんしても結論にたどり着かない部分もあるだろうから、それは合併してしまってから話し合っても何とかやっていけるでしょう。

 ●柏木君 出身地を聞かれたとき、合併して「広尾」という名前が無くなっていればやっぱり寂しさを感じます。

   後悔しないための努力も  雇用の確保が最大のカギ 

 ●畠山さん 合併について勉強しなきゃというのはすごく思うのですが、行動が伴わない。でも大人になって十勝に戻って来たときに「何であのとき勉強しておかなかったのだろう」と考えるのではないかとも感じています。

 ●三澤さん 合併で役場の職員が減れば、その分雇用がなくなって若い人が戻って来づらくなるし、地域の死活問題。小さなマチでは、雇用をどうしていくかが一番の問題だと思います。

 

 

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