来るか 地域主権時代〜藤沢町に見た住民自治の姿

【2.コミュニティの特徴-5】

地域メディア研究所代表 梶田博昭

2002/09/17
(オンラインプレス「NEXT212」94号掲載)

 

 <4>政策との連動〜まちづくりの重要課題の解決に生かされている

 藤沢町の住民参加型まちづくりは、生活環境の整備にとどまらず、医療・福祉、教育の分野で大きな成果を上げています。家庭内での自助努力、地域内での助け合い、行政の援助〜が互いにうまく連動しており、全町の90%の世帯が参加している民間ボランティアや地域福祉医療基金が、それを裏付けています。

 町民の「ハートで誘致した」企業

 しかし、最も注目すべきは、住民自治を主眼とした自治会の組織化が、産業振興策と連動して進めらたことにあります。住民自治の基盤となる地域の崩壊に歯止めをかけなければ、住民自治そのものが無意味であり、働く場がある、という地域存続の絶対条件を満たすことが、住民自治の可能性を広げるからです。藤沢町は、住民自治と産業振興を巧みに連動させることで、その両者の実を上げていった点で高く評価できると思います。

 産業振興策の最大の柱は、農業であり「地域の実情に合った独自の農業を住民主体で展開する」ことが目標とされました。集落単位に協業化により適地適作農業を行う「1集落1農場」構想を基に、「ミニ計画」などを通じて住民・コミュニティの考えを探りながら方策を具体化していったのです。その過程では、営農生活計画の自治会内公開や生産法人化、新規参入の受け入れなどに、「参加と協働」の発想が生かされ、同時に住民同士の結束を深めるという効果を上げたようです。

 また、産業振興のもう一つの柱が「農工一体のまちづくり」で、半生を託せる企業の誘致に当たっては、住民が融通し合って工場用地を提供するなど、協働によるまちづくりの成果の一面をのぞかせました。

●産業政策ともリンクさせる

  住民参加によるまちづくりが叫ばれる中、各自治体は情報公開やパブリックコメント、住民投票などの制度化に力を注ぐ一方、NPOの育成などにより協働の基盤づくりに取り組んでいます。それはそれで行政にとって重要な課題ですが、地域の住民が依って立つ基盤を守る産業政策が、なかなか見えてこない印象があります。コミュニティを生かしながら、まちづくり・産業振興を押し進めた藤沢町の経験を、北海道方式で展開できないものでしょうか。

 

 

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