212の21世紀〜マチは変われるか
第2部・評価編 6.ベンチマーク これらの指標は、「経済」「教育」「児童と家庭」「生活の質」「自治」「公共の安全」という大きく六つ分野に区分されています。それぞれの指標に基づき指標の変化、進行具合が数値で整理され、民間人を中心に組織する評議員会により「ベンチマーク・リスト」という形で報告されます。 「ベンチマーク」とは元々、土地の高低を測量する際の基準のことを指しています。これになぞらえて、状況の変化を見ようと言うことです。 住宅費の問題を例に取ると、従来型の行政では、「低所得者向けの公営住宅を○○戸建設した」とか「その費用は○○億円に上った。前年度より増やした」といった評価にとどまりがちです。住宅事情の改善についての住民に対する説明も、建設予算額や戸数の推移でしか行われていないのが実態です。 これに対して、住民の住宅費負担がどの程度軽減されたか、住環境に関する満足感がどの程度得られたかを重視する考え方です。行政サービスを提供する側ではなく、受け手の側に身を置いての「成果主義」といえるでしょう。 たとえば「家と職場の間を三十分間未満で通勤できる住民の割合の増加させる」という指標では、平均通勤時間の推移や他地域の状況などが明解な記述とグラフで表現されています。さらに、ベンチマークの基準を維持することが「なぜ重要か」については「長い通勤は、環境汚染、交通渋滞など生活の質すべてに影響する。コミュニティには適切な居住と仕事と交通システムが配置されなければならない」と説明しています。 ムルトマ郡のベンチマーク・リストは、行政の舵取りの方向を職員に対しても住民に対しても明確に示しているわけです。日本でも最近、住民に対し行政の実態を明らかにするという説明責任「アカウンタビリティ」の重要性が叫ばれるようになってきましたが、ベンチマークリストは、この課題を極めて単純明快に実現しています。
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