212の21世紀〜マチは変われるか

第2部・評価編

 5.医療・福祉
 広がる地域差、問われる行政の力量

 道内では深刻な医療過疎が続いています。道路整備やマイカーの普及によりある程度遠距離の通院が可能になったとはいっても、やはり身近に医者がいないのは心細いものです。市町村レベルでも医師の確保に手を尽くしていますが、郡部ほど十分な成果が上がっていないのが現実です。

 ■医療過疎に知恵凝らす

 人口一万人当たりの医師数(九七年十月一日現在)で見ると、全道の市町村の平均(単純平均)は十四・二人で、十人未満のまちが七十八町村もあります。ランキング表を見ますと、医師の少ないまちの中には、中核的な都市の近郊にあってこれらの都市に依拠していると見られるケースもありますが、遠く離れたまちも少なくありません。

 ランキング上位には札幌、旭川市などと並んで、石狩管内当別町、胆振管内大滝村、洞爺村の名前がありますが、いずれも高齢者医療に重点を置いた病院施設を持っていることを反映しています。また、「病床ゼロ」のまちは、渡島管内椴法華村など十六町村もあります。
医療過疎を克服するために自治体は、広域医療の整備や医療情報システムの整備などさまざまな知恵を凝らしていますが、地域格差がなかなか縮まらないのも現実です。

 老人福祉の取り組みはどうでしょうか。高齢化社会が進むに連れ自治体にとっては大きな課題です。特に、本番を迎えた介護保険制度は、地域住民のニーズをくみ取って地域に適したサービスが求められているだけに、市町村の行政の力量が問われることになりそうです。

 ■老人福祉費10倍の開き

 自治体の財政の中で老人福祉に充てられた費用が必ずしもサービス水準とは一致しませんが、一つの目安として見てみましょう。九七年度の場合、老人一人当たりの老人福祉費は全道平均で約三十四万円です。
市町村別では、札幌市はじめ都市部が十一万〜十五万円の相対的に低い水準で並んでいます。当然の結果でしょうが、高齢化が急速に進む過疎地ほど老人福祉費に大きなウエートをかけていることが分かります。札幌市の約十倍にもなる留萌管内天塩町など五市町村は百万円を超えています。

    

 同じように教育費について住民一人当たりの支出額を見ますと、全道平均が約十二万円で、市町村別では最少の三万二千から七十万円までとかなり大きな開きがあることが分かります。
こうした地域間の格差は、まちの規模や地域の特性、住民意識の違いなどさまざまな要素を反映しているわけです。行政・まちづくりはこうした要素を見極めながら、限られた財源を配分していくのですが、財政危機の克服と住民自治の実現のためには、これまで以上に政策・施策が重要となり、適正な評価に基づいた事業の選択も必要となってきています。