212の21世紀〜マチは変われるか

第2部・評価編

 8.マイルストーン
 情報の積極公開で住民参画進める


 オレゴン州など米国に定着した行政評価は、住民を顧客、行政をサービスととらえて、より効率的・効果的に顧客・住民の満足度を高めようとする考え方に本質的な特徴があります。

 従来型の評価はいわば「手続き重視主義」で、行政が法令や定められた手順に沿って適正に執行されているかを重視します。従ってその評価は、計画通りに人材や予算が投入されたか、規則や方針に従っているかが目安となるわけです。このため行政内部の問題とされがちで、議会向けの対応にとどまりがちな傾向を見せます。

 「成果主義」に基づく行政評価では、「何をしたか、どのくらいしたか」よりも、結果としての住民の満足度が最大の目安ですから、住民の意思やニーズを重視した取り組みが前提となります。

 ■住民投票で指標を選定

 オレゴン州ムルトマ郡では、行政評価の導入に際して住民参加を積極的に進めました。住民の理解を得るためには、出来上がったシステムを実施する段階からではなく、構想のスタート時点から過程を含めて積極的に情報を提供、公開していこうという考えに立ったものです。
行政評価が住民の満足という成果主義を原則とするから当然のことともいえますが、ムルトマ郡では導入初期から住民説明会を開催するとともに、住民六千人の在宅投票という方法で重要指標を選定するという作業も行いました。

 自治体の財政難が背景にあり、住民の側も支払う税金に見合った価値の行政サービスを求める動きが強まっていた時期でした。それだけに、行政評価システムの導入を機に住民参画の機運も高まっていったのです。

 ミネソタ州では九一年から「ミネソタ・マイルストーン(里程標)」と呼ばれるベンチマーク方式の行政評価を導入しました。計画の策定には多くの住民が直接参加し、集会参加や投書などなんらかの形で参画した住民は小学生から九十二歳のお年寄りまで約一万人にも達したそうです。

 この結果「思いやりのある地域」「富と生活水準の向上をもたらす経済活動」「創造的で国際競争力のある技術」「自然を守り楽しむ」「責任と実効性のある市民本位の自治」という五つの目標を掲げました。


 ■ビジュアルな「通信簿」

 九八年版リポートはA4版で九十ページ近いボリュームがあります。七十の項目ごとに目標(ビジョン)と通信簿(リポートカード)で構成され、改善の進度や関連するデータが表示されています。
特徴的なのは、指標はグラフと表を使ってビジュアルに表現され、リポートの内容がわかりやすくコンパクトにまとめられています。特にグラフは目で見ただけで状況をイメージできるように工夫されており、計画づくりに参画した八歳の少年にもこたえようという姿勢を感じさせます。

 これらの情報提供は、「住民が聞きに来たら教える」という日本型の情報公開とは大きな差異があるようです。「できるだけ住民の元にまで届ける」という発想から、新聞などのマスコミだけでなく、インターネットやCATV(ケーブルテレビジョン)、広報紙が最大限に活用されています。オレゴン州のプログレスボード(評議委員会)のホームページでは、日本語による情報提供さえ行われています。