212の21世紀〜マチは変われるか

第2部・評価編

 9.ローカルスタンダード
 住民直結の市町村、導入に消極的


 日本国内においても政策立案や行政の効率化を目指して行政評価を積極的に取り入れようという動きが強まっています。

 行政評価という言葉自体きちんと定義付けされておらず、「行政を不断に見直す」という広い概念に立てば、当然のように続けられてきたことですが、最近の流れは行政改革の一貫として、評価と成果をできるだけ直結させると同時に、制度として体系化・システム化しようというのがトレンドのようです。

 ■都道府県の34%が導入

 手続きよりも成果重視の方向でシステム化した行政評価導入の先鞭を付けたのが三重県でした。「サービス」「わかりやすさ」「やる気」「改革」の頭の文字を取った「さわやか運動」として北川正恭知事の主導で九六年度から「事務事業評価システム」がスタートしました。事務事業の評価を通じて計画・実行・点検のサイクルを定着させ、さらに政策・施策、総合計画とも関連付けていく方針です。

 また道が九七年度に導入した「時のアセスメント」は、「時」というものさしを使って行政を再評価する手法が注目されています。九九年度からは施策・事業全般に広げた「政策アセスメント」もスタートしています。

 このほか静岡県の「業務棚卸表」(九七年度)岩手県の「県政評価システム」(九九年度)など都道府県レベルでの動きが活発となっています。東京都も米国流ベンチマーク方式を取り入れた「東京チェックアウトリスト」(九九年度)をまとめ、本格的な行政評価導入に動いています。

 市町村レベルでも、札幌市や滋賀県長浜市などが「事業評価システム」導入の動きを見せています。また、大分県臼杵市はバランスシートの採用に続いて、事業の種別ごとにコストを算定するサービス形成勘定を導入するなど企業会計方式にならった新たな取り組みを進めています。

 ■求められる実践、積重ね

 自治省が九九年九月末現在でまとめた地方公共団体における行政評価の取り組み状況によると、都道府県の五五%(うち導入済み三四%)、政令指定都市の二五%、市区町村の三%が「既に導入済み」または「試行中」と回答しました。都道府県が先行し、市区町村が依然として消極的なことがうかがえます。

 都道府県、指定都市とも残りのほとんどが「検討中」としているのに対して、市区町村はわずか二八%の低率にとどまっています。
住民満足度と成果主義に重点を置く行政評価は、住民と直接向き合い、生活に密着した行政サービスを行っている市区町村にこそ求められるシステムだと思います。また、行政評価は住民ニーズや地域特性に応じたものでなければなりませんから、百のまちがあれば百のシステムがあるはずです。市区町村の多くが都道府県の成果や国の指導に期待して「待ちの姿勢」にあるのだとしたら残念なことです。

 小さなまちから率先して行政評価の導入に取り組み、これらの積み重ねの中からより優れた行政評価システムが育っていくのではないかと思います。行政評価の基本的な考え方など先進事例は大いに学ぶべきですが、住民の満足度に視点を置いた住民本位の行政は、いってみれば「ローカルスタンダード」を住民自身の手で築き上げることにほかなりません。