続々・市町村合併を考える3-2

過疎地の生き残り策(2)群馬県・万場町、中里村の場合(上)

2002/03/25

 

  コミュニティの自立にこだわり

 万場町は、群馬県の南西部にあって、利根川の源流に沿った山里。西隣の中里村とともに林業やコンニャクの生産地としても知られています。90年〜95年の人口減少率が両町村とも12%を超え、急速に過疎が進行しています。

 1889年の明治の大合併以来、上野町を加えた3町村の間では、何度か合併の話が持ち上がりました。1世紀以上も独立を保ってきたのは、山里ならではの共同体意識からでしたが、住民の高齢化に対応した福祉サービスの充実が課題とされる一方で、財政難は深刻化するばかり。学校整備の問題も含めて、行政の基幹的なサービス提供にも不安が増していきました。

 ■互いの顔が見えない広域合併

  2000年9月に万場・中里両首長の合併に向けた会談があり、2001年6月には任意の合併協議会が発足、12月には法定協設置に漕ぎ着けました。法定協設置をめぐっては、中里村議会が賛成5反対4の僅差の票決となるなど、複雑な住民心理をのぞかせました。「3千人そこそこの合併では意味がない」という声を背景に、上野、鬼谷町など近隣との広域合併を求める声も聞かれました。

 群馬県の要綱では、藤岡市を核的な存在とした7市町村(人口規模約11万人)の組み合わせ案を提示しています。要綱策定に当たっては、通勤、通学、通院や買い物などの社会指標を基に、地域間の「結び付き度」を数値化して、検討したそうです。このデータによると、7市町村の域内交流度は1920点で、高崎を中心とした7市町村の2735点に比べると、市町村相互間の結び付きが低いと分析されています。

 個別の市町村間の交流度をみると、万場町、中里村とも互いの関係よりも藤岡市とのつながりが強い結果となっています。藤岡市の東側の吉井、新町とはほとんど交流がないことも分かります。

 ■基幹行政サービス保全でミニ連携

  要綱では人口規模1万人未満の合併については、「山間部にある町村など地理的条件等から勘案して、合併への制約を数多く有する地域」とし、「基幹的行政サービスの提供、行財政基盤強化、地域保全」を目標としています。1〜2万人規模が「 適切かつ効率的な行政サービスの提供、行財政基盤強化、地域振興」を目標としているのに比べると、「過疎+過疎」の小規模合併は福祉・教育など基本的な行政サービスの最低限の維持に重きが置かれ、合併による効果もこの点に限定されることを示しています。

 しかし、万場町と中里村のケースでは、大規模合併にできるだけ頼らず、なんとかコミュニティの自立性を保って行きたい、という思いが、2町村合併という選択につながっていると思われます。

 

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